フィリップとの面談の最中でも、やりたい放題言いたい放題のドリスを見て、フィリップはきっと厄介なやつが来たと思ったことでしょう。
しかしそんなフィリップの気持ちを溶かすような瞬間がさりげない言葉の中にありました。
知ってて冗談言った。音楽もユーモアも両方に疎いね
引用元:最強のふたり/配給会社:ギャガ
これはドリスがショパンやベルリオーズに対する冗句を言ったことに対する秘書の反応の薄さをいじったのです。
それまで他の志望者が何を言っても眉一つ動かさなかったフィリップの顔に、初めてしてやられたというような表情が浮かびます。
この時点ではまだドリスに対するフィリップの評価は決して良いものではなかったでしょう。
しかし、秘書に対する冗句を受けて思わず笑みを零したりと、ドリスに対して興味を持ち始めていたことは確かなのではないでしょうか。
介護人としてのドリスの素質
ドリスの働きぶりについて
やっとの思いで手に入れた介護というドリスの仕事には、彼が想像していたよりも多くの業務があったはずです。
身の回りの世話はもちろんのこと、血行促進ストッキングを履かせるのも彼の仕事でしたが、こんなことまでするのかと最初は不満を感じたようです。
女じゃあるまいしストッキングの履かせ方など分からない。介護士のマルセルにやらせればいい。
引用元:最強のふたり/配給会社:ギャガ
愚痴を零していたドリスですが、その働きぶりは実に感心するほどだったのでしょう。
なんだかんだ言っても、結局ストッキングを履かせるのもドリスの仕事になったのですから。
手際がいい。考えたことないのか?美容業界への就職を
引用元:最強のふたり/配給会社:ギャガ
美容業界云々は冗句でしょうが、フィリップはドリスの仕事ぶりに対してこのように評価しています。
フィリップがドリスの仕事ぶりを称賛する場面は劇中に他にも見受けられますね。
フィリップが認めたドリス
フィリップはドリスが自分に遠慮や同情をしない点を気に入っていましたが、更にこんな言葉も出てくるほど気に入っていたのでしょう。
体が大きく健康で脳みそもある
引用元:最強のふたり/配給会社:ギャガ
一見嫌味のようにも捉えられますが、これはフィリップなりの愛情表現でもあるのではないでしょうか。
ドリスのこうした介護人としての天性の素質もまた、フィリップがドリスを気に入り二人が友情を育んでいった重要な要因だということができます。
芸術や音楽
異なる嗜好と通じ合うセンス
日頃からクラシック音楽を嗜んだり、邸内の様々な場所に絵を飾ったりと、芸術を愛するフィリップの人間性は劇中の至る場面から窺うことができます。
芸術好きのフィリップが絵に高値を付けるのを目の当たりにしたドリス。
描いた一枚の絵はいつもの冗談のつもりだったのではないでしょうか。
しかしその絵に才能を感じたフィリップは、きっとドリスには特別な何かがあると感じていたものと考えられます。
そして初めて出会ったときに感じたような厄介者とは違うと感じたはずです。
フィリップは誕生日会に招かれた管弦楽団にいくつかの曲を演奏させ、あえてドリスの人とは違うものの見方を知ろうとするのですから。
その一曲一曲に対しドリスが返すユーモアに溢れたコメントに、フィリップは思わず笑顔を見せ、彼の人としての魅力に気づいていったのでしょう。
孤独だった二人を近づけた共通の価値観
これらのやり取りから、二人が友達になった理由の一つに趣味や嗜好は異なっても芸術を愛する心とセンスが似通っているというのが挙げられます。
何か共通のセンスがあればお互いに通じ合うことができるのではないか、そんなことをフィリップは考えたのかもしれません。
また、二人の交流を見ていると、人は自分とは相反するものに心惹かれていく習性があるということも示されているように思えますね。
喜びや楽しさを分かち合えるというのは、それまで互いに孤独だった二人を近づけるのには十分な要素だったのです。