人間を殺めてしまう狂気など、山神は最初から持ち合わせていなかったのです。このことからも真犯人が山神ではないことが証明できます。
難解な山神の振る舞いの思惑と理由
大阪の男の供述が報道されたその日、山神はバイト先で大暴れし、そのまま姿をくらましました。
なぜそれほどまで取り乱し、逃げ出したのでしょうか。
壁に刻んだ「怒」
その日の報道により、山神は自分をはめた人間が大阪の男であることに気がついたのではないでしょうか。
大阪の男が自分を犯人に仕立て上げたことに驚き、すぐさま激しい怒りの感情が湧いてきたと推測できます。
信用していたからこそ怒りが湧いてきたのです。自分を陥れた相手と、自分自身に向けて「怒」を壁に刻んだと思われます。
ホクロをえぐり取ろうとした
山神はこの日の報道で犯人のモンタージュ写真を初めて見たのかもしれません。そのモンタージュ写真の男には自分と同じホクロが。
客観的に見て、そのホクロは印象的だったのでしょう。殺しなんてしていないけれど、指名手配になっている恐怖。
その恐怖に突き動かされ、山神はホクロを取ろうとしたのです。
「犯人には右頬に3つホクロがある」と知っていたら、事件発生から1年経過してから急にえぐり取ろうとは普通は思いません。
このことからも山神が真犯人ではないことが分かります。
逆立ち
山神は辰哉を煽った後、なぜか逆立ちを始めました。この行為には何か意味があるのでしょうか。
逆立ちは無防備であり、相手のなすがままになってしまいます。怒りに支配された辰哉が何をするか分からない状態です。
あえて逆立ちした意味は怒りの反対にありました。
怒りの反意語は寛容です。人を許し、受け入れること。それを逆立ちで表現したのではないでしょうか。
自分が死ぬことも全て理解していた上での行動だったといえます。
怒りの連鎖は続く
山神を殺した辰哉の中に芽生えた感情は怒りでした。怒りが怒りを呼び、その連鎖が断ち切れていないことが分かります。
もしかしたら大阪の男も誰かにはめられて怒りを宿してしまったのかもしれません。
その怒りは山神へと引き継がれ、最後には辰哉が怒りを継承したのです。
そう考えると次は辰哉が他の誰かを陥れて、新たな怒りを生み出す番になります。
この負の連鎖に終止符を打つのはいつになるのか。それは誰にも分からないのです。