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【星になった少年(ネタバレ)】ラストを徹底考察!哲夢がタイで象を使えるようになった理由とは?家族と象のその後にも迫る

出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B000BNFIEO/?tag=cinema-notes-22

世に「トレンディードラマ」というジャンルを生み出した演出家・河毛俊作監督の映画デビュー作が2005年に公開された「星になった少年」です。

柳楽優弥はその圧倒的な目力で見る者をぐいぐい引き込み、動物たちの素晴らしい演技が映画にリアリティーを与えました。

実話ベースの映画はともすれば中途半端になりがちですが、巧妙に仕掛けられた演出によって一気に感動のラストへと導かれていきます。

捨てられた「哲夢の設計図」の意味や、ラストシーンの小象の名前が示すことなど「星になった少年」の裏側を徹底考察していきましょう。

それぞれの背景と抱える問題

哲夢と佐緒里

星になった少年 Shining Boy & Little Randy

哲夢がいじめにあっている時、佐緒里が突き放したような態度をとったのはなぜでしょう。

佐緒里は自分の考えをズケズケと言う性格で、人の気持ちを汲み取ることが苦手な女性です。

回想的に描かれる彼女の生い立ちのシーンは、そのことをさりげなく伝えています。

自分の子供も含め、人の想いを受け止め切れない「佐緒里」と、受け止め過ぎて動けなくなる「哲夢」の対比が印象的です。

この二人は物事に対してまっすぐに向き合うところや、結局自分の真意をうまく伝えきれないところなど、多くの共通点を持っています。

「真逆のようでそっくりな二人」だということであり、このワードは今後の展開で何度も浮かび上がります。

ランディとファー

子象のランディは初対面の時から哲夢とだけ会話ができました。逆にいうとランディは哲夢以外とは会話ができないということです。

これは哲夢以外の人がランディに対し「人間を警戒している」という感想を持つことでわかります。

では、なぜ哲夢となら会話ができたのでしょうか。

それは哲夢が持つ特殊能力「象と会話ができる」によるものです。

そして、ランディが「哲夢にはうるさいほど話しかけてくる」という設定は、自分の想いが伝えたいのに伝えられないジレンマを表しています。

言い換えると哲夢とランディの両方が抱えるもどかしさなのではないでしょうか。

キーワードは「真逆なようでそっくりな二人」

佐緒里=哲夢=ランディという図式は成立しましたが、佐緒里=ランディではないことで物語に深みを出しています。

タイに渡った哲夢が、もし自分のことをもっと理解していれば、タイでの相棒ファーの気持ちをすぐに理解できたかもしれません。

しかしその時点では無理でした。まだ強く依存心を抱えた子供なのです。

タイでもいじめられ孤独になる哲夢が感じる苛立ち。

観る側も同様に苛立ち、モヤモヤした気持ちになります。周到に計算された河毛監督の見事な演出ですね。

象使い育成学校の校長が哲夢に言った「ファーの母親になれ」という教えるシーンがあります。

このシーン以降の哲夢の苦労を、まるで「親のような気持で見守ってやってください」と観客を導く仕掛けです。

タイの文化と哲夢

タイ人にとっての象とは

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タイ人にとっての象は、単なる動物ではありません。彼らにとっての象は、生活に密着した仲間であり、敬われるべき特別な存在です。

それはタイが仏教の国であり、ブッダの前世が白い象だと信じられているからです。

タイにとって象とは「国の象徴」といえます。ですから、象使いを育成する学校の生徒たちはとても誇り高いのです。

「タイ人にとっての象」と「日本人にとっての象」。この意味の違いを表現するために、監督は哲夢に試練を受けさせます。

未来の象使いたちから見た哲夢を「生半可な気持ちで来た外国人」という設定にしています。

これはタイにおける象という生き物を神聖化するための仕掛けであり、ラストに向けた布石です。

日本での孤独とタイでの孤独

日本で受けた「動物臭い」という薄っぺらないじめ言葉などでは哲夢は傷つきませんでした。

しかし、タイで受け入れられなかったときはとても落ち込みます。

この対比こそが監督が伝えたかったことのひとつなのです。

それは、単純に自分より弱いものをいじめる日本と、自分のプライドを守るために排他的になるタイ。

そのギャップを目の当たりにすることで、自身の夢を見つめなおし決意を固めていく哲夢。

現代日本の稚拙で単純ないじめの心理に一石を投じているシーンです。

なぜファーは哲夢を認めたのか

ファーの声が聞こえた哲夢

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ファーと母象の別れのシーンは観る者の涙を誘いますね。実はこのシーン、重要なターニングポイントなのです。

ここでの監督は、深い親子愛を表現していると同時に依存からの決別をテーマにしています。

母象を見送るファーの背中に、何か重大な決意を感じた方も多いのではないでしょうか。

そして、それを見る哲夢の背中もある種の決意を感じさせます。

人と象の俊逸な演技でこそ表現できた「お互いに腹を決めた」重要な場面です。腹を決めた者同士は硬い信頼で結ばれます。

哲夢にキスをしたファー

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哲夢が滝に落ちそうになった時、ファーが助けに現れます。

これはファーの声を聴くことができた哲夢に対して、哲夢の危機を感じ取れたファーという「絆」を感じさせる感動的な場面です。

これは哲夢とファーが対等な仲間であることを表現しています。河毛監督ならではの絶妙な演出ですね。

哲夢のおでこにしたファーのキスの音。このシュポンという音こそ、互いの心が通い合った音なのです。

象使い哲夢の誕生

タイの仲間に認められた哲夢

トートバッグ レディース ねこ パン ハンドバッグ ショルダーバッグ 手提げバッグ哲夢とファーを迎えに来たポーたちを引きアングルで撮影することで、ここにも絆が生まれたことを伝えています。

そして、それは自然の成り行きだったのだということを暗示しているのです。

ここに象使いの学校始まって以来の「真の外国人の象使い」が誕生します。

この瞬間を「間近で見守っている」という気持ちにさせてくれる見事な演出に引き込まれます。

真の意味での自立とは

やっと真の象使いとなった哲夢。そんな彼が象使いになるために必要なピースは2つありました。それは「覚悟と信頼」です。

そしてその2つのピースを手に入れるために必要だったのが「4つの勇気」です。

  • 自分自身に向き合う勇気
  • 依存する心を捨てる勇気
  • 相手を認める勇気
  • 諦めない勇気

言い換えれば「自立」です。

本当の意味での「自立」をするためには、哲夢は佐緒里と、ファーは母象と別れる必要がありました。

ここで、前述したターニングポイントのシーンが生きてきます。

監督の絶妙な仕掛け

1つ目の仕掛け

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動物たちの動きには特撮技術を使ったような形跡は感じられません。

しかし、最後のスタッフロールを見るとVFX担当の名前が大勢クレジットされていますね。

どこでVFXを使ったのかわからないほどの加工は見事です。

しかし、そんな達者なスタッフの仕事とは思えないほど違和感を覚える場面が2つありました。

1つ目は佐緒里が象を購入すると家族に話した後のシーンです。

屋根に座る哲夢に、祖母が帽子を投げ渡しましたね。その投げられた帽子は、不自然な軌道を描き哲夢の手の届きます。

これは、ラストシーンで意味を持つ「帽子」を強く印象付けるための仕掛けです。

スローモーションにするよりも、はるかに心に残るこのVFXは、ラストシーンへの重要な布石なのです。

2つ目の仕掛け

哲夢が事故で亡くなった後、絵美が佐緒里にプリントの裏に描かれた「設計図」を渡します。ここが2つ目の仕掛けです。

教室の窓から捨てられた哲夢の設計図が描く奇妙な軌道も、大切なラストシーンへの布石です。

哲夢の薄いリアクションと落ちた設計図は未回収という演出は、ここは重要なシーンだということを暗に印象付けるための手法でしょう。

この漫画チックなVFXは「この設計図を覚えておいて」という監督のメッセージなのです。

VFXとは

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VFX(ブイエフエックス)とは視覚効果という意味です。

映画やテレビドラマにおける特撮の一種で、現実には見ることができない表現や動きを「画面効果」として可視化する技術のことです。

再会と別れ

ランディとの関係

動物写真赤ちゃん象Cute BW FRAMEDアートプリントポスターf12 X 9924 12-Inches x 16-Inches 象と象使いの関係はただの「友達」ではだめなことをタイで学んだ哲夢は、ランディと「家族」になろうとします。

しかし、哲夢の言うことを聞こうとしないランディ。これは、タイに行く前の哲夢と佐緒里を象徴しています。

固い決意の哲夢は、凄まじいほどの根気と粘りでランディとも心を通わせます。

これは親子関係も含めた人間関係の困難さを表現したシーンです。

哲夢の頑張りに共感を覚えた人も多いのではないでしょうか。

ラストシーンの意味とは

哲夢の死という変更不可避な事実は、あまりにも理不尽で唐突で、少なからず衝撃を与えます。

1つ目の布石である「哲夢の帽子」をかぶったポーと、テツという名をもらった子象。

これは仏教国共通の意識である「輪廻転生」を表現しています。

タイで受けたいじめの中の何気ないセリフも、このシーンへの鍵だったことがここではっきりするのです。

そして2つ目の布石である「哲夢の設計図」は、親子関係の象徴です。

設計図が母の手に渡るということは、哲夢の気持ちを佐緒里が受け取ったことを伝えています。

このシーンがあるからこそ悲しい「哲夢の死」から、少し救われたという気持ちを抱いて見終わることができるのです。

その後の家族たち

りり香(か)と結希(ゆうき) 神様からの贈り物 (日本語) 単行本常盤貴子が演じた「佐緒里」のモデルは原作者の坂本小百合さんです。彼女はその後も波乱万丈な人生を送っておられます。

念願の「市原ぞうの国」を開園したものの、哲夢さんを亡くされた小百合さん。

その悲しみを乗り越え、ミッキーやランディも「市原ぞうの国」で2020年現在も元気に暮らしています。

「市原ぞうの国」に行けば、ランディに会えるかもしれません。そして心が通じ合うかもしれません。

その時はランディにそっと教えてあげてください。哲夢はタイで象に生まれ変わって元気に暮らしていると。