映画の後半、バンドへの愛を見失っていたショーンがデヴォンの実力を認めるシーンがやってきますが、それは認めると共に今までにない程の大きな切り捨てでした。
「一人でやってろ」
引用元:ドラムライン/配給会社: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
このショーンの言葉はバンドをクビになった時よりも深くデヴォンに響いたことでしょう。
ドラマーとして楽譜を読めなければいけないというよりも、バンドのために楽譜を読む必要があったのですから。
デヴォンに楽譜学習を決心させたのは、他でもないショーンの叱咤によってバンドへの愛が芽生えたからといえるのではないでしょうか。
ラストでなぜ監督はデヴォンを出場させたのか
それは、デヴォン自身の成長と監督がデヴォンから受けた影響の2つの理由が考えられます。
デヴォンの成長
ドラムラインの対決といえばデヴォンがライバル校と騒動を起こしたものであり、今回の大会に出場できなかった要因のひとつでしょう。
デヴォンが自分に足りなかった協調性や思いやる心、すなわちバンドへの愛を学んでいくことを監督も分かっていたのかもしれません。
だからこそ、あえて過去に問題を起こしたドラムラインの対決でデヴォンを出したのではないでしょうか。
相手チームからの挑発のシーンは、過去に自分自身がやったことにデヴォンが拳を握って耐える描写がとても印象的です。
そのことからも、ドラム対決を通してデヴォンの成長が描かれていることが分かります。
リー監督がデヴォンから受けた影響
監督はデヴォンが楽譜を読めなかったと分かった時、スカウトした自分にも問題があったと感じたはずです。
デヴォンに嘘をつかれていた事に失望した時の次の言葉は、問題児であるデヴォンに少なからず惹かれていたからこその言葉でしょう。
「私は間違っていた。自分の信念を貫く」
引用元:ドラムライン/配給会社: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
今までの堅物といわれていた自分の考えが、デヴォンによって少しずつ溶かされていたからこそ、裏切りにショックを受けたのだと考察できます。
リー監督の本当の信念
そんなリー監督の心を開いたのもまたデヴォン自身だといえます。
ショーンとの合作の曲を持って来た時もリー監督はデヴォンのことをすんなり受け入たことからも、こうなることが分かっていたのではないでしょうか。
監督のいう「信念」とは輪を乱す問題児を追い払い規律を正すことではありません。
劇中冒頭、リー監督は次のように言っています。
「ルームメイトが寝坊をしていたら起こすのがバンドだ。一人の失敗はバンドの失敗なのだ。」
引用元:ドラムライン/配給会社: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
楽譜が読めなく問題児だったデヴォンとバンドへの愛を見失いかけていたショーンは、それぞれが悩みを抱えながら音楽に向き合っていたということになります。
お互いを補いあって成し得た合作だからこそデヴォンが出場して初めて「one band.one sound.」が完成したのだと考えられるのではないでしょうか。
監督の本当の信念とは「仲間を思いやる愛、そこから生まれる音楽」だったのではないでしょうか。
まとめ
今回は青春映画「ドラムイン」の中に見出すことができた監督の信念や、主人公デヴォンについて考察してきました。
いかがでしたでしょうか?
青臭い青春ものとは一味違う、音楽という明確なテーマがあったからこそ、登場人物の気持ちの微妙な変化にも共感し楽しむことができる作品でした。
人は簡単には変わらないとはよくいいますが、変わろうという意思があればきっと変えることができるのかもしれません。
だめなやつ…と嘆く前に、人との関わり方を大いに考えさせてくれる映画でした。
最後までご覧いただきありがとうございました。