劣悪な環境で育った彼はいつの間にか自分自身を表現する事を諦めてしまい、大きな身体とは反して自信のなさが伺えます。
まったく気づいていなかった、または見ないようにしていた自分自身の心や個性というブラインドサイド。
テューイ一家と出会い、そんな彼のブラインドサイドに少しづつですが光が射すようになります。
自己表現をするようになるマイケル、作品の後半では自身に芽生えた自我に困惑するようなシーンもみられました。
一家との間に大きな溝が生じる危機に陥りましたが、これは彼自身の成長であり、双方にとって乗り越えなければならない壁だったのです。
自分自身の心、そしてテューイ一家との家族の絆、成長の先に彼は多くのものを守ったといえます。
テューイ家が守ったブラインドサイド
マイケルが一家を守ったように、一家もマイケルを守り、お互いに成長していきます。
彼に手を差し伸べたテューイ一家の守ってきた事を見ていきましょう。
一人の少年の未来
自分の家もなく、家族もなく、学校でも孤立ぎみのマイケルを保護し、後見人にもなったテューイ一家。
マイケル本来の優しさ、礼儀正しさもありましたが、それを持っている事を見抜いた夫妻は立派です。
コリンズやSJも差別や偏見なく、マイケルを迎え入れています。そこには差別のない教育が必要になります。
裕福なだけでなく、正しい教育も施してきた家族の姿勢の正しさが見えるのです。
格差と貧困
裕福な白人として生きてきたテューイ一家は今までボランティアなどをしてきましたが、貧困の実情を知りませんでした。
黒人が受けている格差や差別、貧困などをマイケルを通じて知り、自分たちの考えが甘かった事を思い知ります。
差別なく、おおらかに包み込んでくれたテューイ一家の4人は、キリスト教精神を持つ人として描かれているのです。
心からの善意としてマイケルを迎え入れているところが本作の美しさといえます。
作品中で心に残った言葉を探る
名言が多い本作ですが、ここでは心に刺さったシーンのセリフを引用付きでまとめます。
読者の皆さんも心に残る印象的なシーンを思い浮かべて御覧ください。
子どもたちに怯えられないようにする
子どもたちに声をかけましたが、怖がられて逃げられてしまいます。
白人に対しての気後れを感じて途方に暮れるマイケルが、その場にいたSJに声をかけられるのです。
笑顔だよ。友達になりたかったら。
引用:しあわせの隠れ場所/配給会社:ワーナー・ブラザース
黒人である自分に全く気後れせず、自己紹介してくるSJとの出会いで、マイケルは少し笑顔になります。
初めてのベッドという衝撃
テューイ家に自分の部屋を持ち、嬉しいけれども戸惑うマイケル。
初めてです。 自分の部屋が? ベッドが。
引用:しあわせの隠れ場所/配給会社:ワーナー・ブラザース
その壮絶な人生を知る事になったリー・アンは言葉を一瞬失います。
今は自分のがある。
引用:しあわせの隠れ場所/配給会社:ワーナー・ブラザース
そう言って離れたリー・アンは隠れて涙したのではないでしょうか。
誇りを持って生きる事を覚えたマイケル
マイケルは今まで大人の言う事に関して、命令だからという感覚しかありませんでした。