精神病院での入院中に、パッチは「人の心の病を助けたい」という思いを抱きました。
映画を観ていると、その思いを変わらず抱き行動の指針としていることがうかがえます。
付属病院で臨床の授業に潜入した際、医学部生たちが患者を目の前に質問を繰り返す場面を覚えているでしょうか?
医学的な質問をする学生に対しパッチは患者の名前を聞いたところ、周囲の空気が妙な空気に変わりました。
このシーンは、パッチが病気の治療を超えて患者の心の治療を大事にしていることを表しています。
その後も患者の名前を呼ぶシーンは何度もあり、パッチの思いの強さを表す重要な鍵であることは間違いありません。
患者にとっての幸せとは
全項目から続き、パッチの思いと照らし合わせ考察していきます。
病院に潜入し患者を笑わしたり、学内で勉強中にジョークを飛ばしたりとパッチは何かと白い目で見られます。
ところが、周囲にお構いなしに自分を貫き、患者を楽しませ人を惹きつけるパッチに次第に周囲は魅了されていきました。
パッチは、“不安を取り除いて、幸せにすること”、という自分自身の命題をわかっています。
机上の勉強や臨床で病気についてだけ学ぶこと以上に、患者をないがしろにしないという本質が医者として大切だと見抜いていたからこそパッチは病院へ通い続けたと解釈できます。
勉強する描写がほとんどない謎
映画の中で、パッチがなぜトップの成績を収められたのかは明かされていません。
このパートではこれまでの考察を踏まえ、”成績の謎“とこの映画が伝えようとしている”本質”に迫っていきます。
勉強姿を見せないパッチ
前述したように、パッチがなぜ成績が良いかは映画内でわからず、同級生たちの間でも謎となっています。
パッチは部屋でろくに勉強せず毎日病院で遊んでいると思われ、ルームメイトのミッチにカンニングを告げ口されます。
口論の後、部屋を立ち去るときにパッチは次のように言います。
「クソッタレにならねば望みを達成できないと思っているらしい。」
引用:パッチ・アダムス/配給会社: ユニバーサル・ピクチャーズ
クソッタレとは、ここでは机に向かってひたすら勉強しているという意味でしょう。
この後パッチが立ちさり、ミッチが悩ましそうに頭を抱える描写があるものの、これはパッチの放つ言葉の意味を本心ではわかっていることを表しているのでしょう。
ミッチの変化
そして映画が進み、パッチはミッチより、何度も診察し顔を合わせているのにご飯を食べようとしない患者を救ってほしいと依頼を受けます。
この時ミッチは下記のようにパッチに発言しています。
「君は人の心をつかむ天賦の才能がある。」
「人に好かれる。」
「僕は君から学びたい。」引用:パッチ・アダムス/配給会社: ユニバーサル・ピクチャーズ
また患者の説明では、患者の名前をきちんとパッチに伝えました。
感情的に距離を置き、患者を一人の人間として見ていない立場であったミッチが、ついにパッチを認めたとわかります。
またパッチと対比されていたミッチが、表面的に問題を見ることから問題の奥にある答えを見つけようとした初めての描写でした。