内容全体を通した「勘違い」に代表されるように、あくまでもダークコメディに製作側は仕上げようとしているのでした。
しかし本作では何人もの人が死ぬというダークな一面が多く出てきました。
つまり、ダーク要素にコメディ要素を差し込もうとして死人の告示を何度も出したのです。
死人の告示に含まれるコメディ要素2:コミカルな音楽
反復だけでも十分製作側が笑いを取りに来ていることは分かります。
しかしよりコメディ色を強くするために、死人の告示が行われる際に随分間の抜けたコミカルな音楽が流れていました。
その視覚的に面白さを誘うだけでなく、聴覚的にも明確に笑いを取りに来ていることをアピールしているのです。
これは死人の告示というダークさを濁す意味でも、一役買っていることは間違いありません。
映画の観衆に対して「これは笑うところですよ」と、うざったいほどにアピールすることで観衆は「笑っていいのかな」となるのです。
死人の告示に含まれるコメディ要素3:エンディングロール
これほどまでに死人の告示を印象的にしたからこそ、最後のエンディングロールでもうひと笑いが起きます。
エンドロールは普通「in order of appearance(登場順)」となりますが、本作は「in order of disappearance(死んだ順)」と表示されていました。
他の映画にはない、死亡順で役者を紹介していくスタイルは非常に斬新です。
しかもそのスタイルを浮きだたせているのは、それまでに散々映像として印象付けられた死人の告示なのです。
その印象があるからこそ、エンドロールでのその演出にもうひと笑い起こすことができます。
原題『Cold Pursuit(冷たい迫撃)』と邦題『スノー・ロワイヤル』
本作の原題は『Cold Pursuit(冷たい迫撃)』です。
それが邦題『スノー・ロワイヤル』になったのは、殺しという共通点を持つあの映画が関わります。
それが『バトル・ロワイアル』です。実は『バトル・ロワイアル』でも、生徒が殺された時出席番号と名前がテロップに出ます。
原題から邦題に変えられるときに、本作の死人の告示は『バトル・ロワイアル』を彷彿させるものがあったから、邦題の表現になったのです。
ダークさにも、コメディにも徹底追及した『スノー・ロワイヤル』
本作はダークコメディという評価がされています。
それには徹底した「ダーク」と「コメディ」への追及が見られるからです。
殺しだけでなく「ダーク」への追及はパッケージにも…
復讐や勘違いによって、簡単に人の命がなくなっていく過程にダークさを感じる本作。
そのダークさへの追及は、作品のパッケージにも表れています。パッケージのネルズの後ろには十字と羽がついたものが13体あります。
13日の金曜日、英語で13は「悪魔のダース」、イエスを裏切るユダは最後の晩餐のシーンで13番目に座る…
13という数字は不吉な数字だとして捉えられてきました。それをあえて表示することで、観衆を挑発しているのです。
それこそ製作側がダークコメディの限界に挑戦している証拠です。
主演リーアム・ニーソンもダークさとコメディを追求
ネルズ役として主演を務めるリーアム・ニールソンも、本作がダークな笑いが散りばめられていると紹介しています。
やはり製作側もダークさとコメディを追求してきたのです。その中で勘違いや死人の告示が、一つのツールとして使用されてきました。