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時は18世紀末。アメリカの片田舎での不可思議な連続殺人事件を描いたダーク・ファンタジー、『スリーピー・ホロウ』。
ティム・バートンとジョニー・デップの黄金コンビが送る今作は、映像美と衝撃的な首切りシーンのコントラストが何とも魅力的。
第72回アカデミー賞では美術賞を受賞しています。
ラストで真の姿を現した首なし騎士は、黒幕のヴァン・タッセル夫人を連れて地獄へと帰っていきました。
この映画では不可思議で魔術的なことが次々に起こりますが、この部分は特に異様です。
騎士が夫人を連れ去る理由が、そのシーンだけでははっきりとは分かりません。
そして謎はもうひとつ。夫人の双子の妹、西の魔女は、なぜイカボッドに騎士の亡骸の場所を教えたのでしょうか?
『スリーピー・ホロウ』、二つの謎に迫ります。
魔術が残る村、スリーピーホロウ
二つの謎の中心となるのは、ヴァン・タッセル夫人とその妹。彼女たちはどちらも魔術を操る魔女です。
この映画における魔術とはいったい何なのでしょうか。
イカボッドが怖れる魔術
捜査官のイカボッドは、首なし騎士の伝説におびえながらも科学で事件を解決しようとします。
それは公平な判断に基づく捜査のためだけではなく、彼のトラウマにも起因しています。
イカボッドの母はまじないを使う人でした。そしてそのために、鋼鉄の処女で拷問されて命を落としてしまいました。
幼いイカボッドは母に存分に愛されていたからこそ、その死体を目にしたショックは相当なものでした。
そのため彼は、人一倍魔術的なものへ対する恐怖と猜疑心が強いのです。
主人公は魔術に抗う者。この映画での魔術は、決してポジティブな立ち位置ではありません。
実在する魔術
主人公が科学側の人間であれば、不可思議な事件も科学的に解決するのが定石でしょうか?しかし、この映画は違います。
確かに、科学技術はイカボッドの捜査を助け、彼に閃きをもたらしたでしょう。
しかし、この映画に登場する魔術はインチキやまやかしではなく、実在するものなのです。
騎士は首がなくても殺人を繰り返し、西の魔女はイカボッドの目の前で魔術を使います。
主人公(=科学)を圧倒するのが魔術なのです。
古い魔術が息づく物語
ところで、この映画には原作が存在します。米国人作家ワシントン・アーヴィングの『The Legend of Sleepy Hollow』です。
そしてさらにこの小説も、ニューヨーク近郊で語り継がれた民間伝承に基づいています。
首なし騎士はアメリカの民間伝承
イギリスの妖精物語や日本における妖怪のように、世界にはその土地ならではの民間伝承が存在します。
それは、国家としては比較的若いといえるアメリカでも同じこと。そしてスリーピーホロウ伝説も、そのひとつ。
伝説の大筋は、映画冒頭で村の長老がイカボッドに語るものとほぼ同じです。