出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B00L1XTF6A/?tag=cinema-notes-22
2005年公開の本作は大人気テレビドラマ『踊る大捜査線』のスピンオフ作品として製作されました。
シリーズでも異質な室井を主人公にし、更に演出や脚本もこれまでにない程シリアスでおふざけ要素もありません。
そんな本作の見どころは室井と灰島の対決を中心とした警察組織内の権力闘争です。
本稿では灰島が室井を執拗に追い詰めた理由を中心に考察していきます。
そして、誰が犯行現場で室井を襲い、室井が広島へ異動になった真意なども観ていきましょう。
警察に正義はあるか?
「容疑者 室井慎次」における全体のテーマは「警察に正義はあるか?」です。
テレビでは無条件に清廉潔白な存在として描かれている警察ですが、本作はその「闇」に焦点を当てています。
果たしてどのように表現されているのでしょうか?
警察の不祥事
「容疑者 室井慎次」の背景にあるのは社会問題になっていた警察の不祥事です。
2005年当時であれば90年代末~2000年代初頭まで相次いだ神奈川県警の不祥事は記憶に新しいものでした。
時代性を鑑みれば、ちょうど「踊る」シリーズが人気だったことなどから忸怩たる思いがあったのでしょう。
その為には国家権力の象徴である警察の「闇」を室井を取り巻く警察の不祥事として描くのは自然な流れといえます。
真の敵は内側にいる
本作が面白いのは室井が戦うべき真の敵が「外」ではなく「内」にいることです。
具体的には室井のライバルたるやり手の弁護士・灰島と終盤で明るみに出る警察署内の権力闘争でした。
これら一つ一つの要素自体は大きな問題ではありませんが、積み重なるとそれだけで大きな火種となります。
特に日本は同調圧力や権威による圧力には弱く屈指易い体質もあり、それがより醜い争いに見せているのでしょう。
室井はこの屈してしまいそうな壁に屈せず戦い続けなければならないのです。
冤罪
そして一番大きく目立つ要素は無実にもかかわらず罪をでっち上げられ不条理に罰せられる、いわゆる「冤罪」です。
最終的に室井は今回の事件が別の第三者によってお仕着せられたものだと判明しますが、冤罪も当時社会問題となっていました。
邦画で「冤罪」だと2007年の「それでも僕はやってない」が代表作ですが、本作はそのテーマを既に2年前に扱っています。
その意味でも実は見逃しがちだけど先見の明がある作品であったといえるのではないでしょうか。
灰島秀樹、その人となり
さて、本題を語る上での大前提として灰島秀樹の人となりへの理解が欠かせません。