こはるが夫を殺したその日、彼女が子供たちに残した言葉がありました。
「あなたたちはこれから自由だ。何にだってなれる。」
引用:ひとよ/配給会社:日活
これを兄妹3人で聞いたにもかかわらず、大樹と園子は当時の夢を叶えることができませんでした。
彼らの境遇から考えれば仕方ないことですが、雄二だけは母親の言葉を糧にして生きてきたようです。
それは良く言えば「心の支え」であり、悪く言えば「呪縛」なのではないでしょうか。
「自由だ」は「自由にならないといけない」へと変換され、雄二を支配したはずです。
雄二を過去に閉じ込めた原因
雄二は15年前の事件の日から、流れの止まった川に様に漂っていたのかもしれません。
進もうにも進めない現状を作り出した原因は母親にあります。そして彼を過去から解き放つのも母親にしか出来ません。
解き放つ方法
人が悩みやトラウマを抱えた時、最も効果的な改善方法は発端となった出来事まで記憶をさかのぼることです。
そして原因となった出来事を理解し、真正面から受け止めなければなりません。
本人にとっては思い出したくないくらい辛い事だとは思いますが、これを乗り越えなくては前へ進めないのです。
この方法は雄二にも当てはまります。彼は苦悩の発端である15年前にさかのぼることで解放されるのです。
兄妹3人で母親を車で追いかけた15年前の再現を、堂下の車を追うことですることができたと考えられます。
あのカーチェイスはただ母親を助けるだけでなく、雄二を過去から救い出す役割もあったようです。
解けた呪縛
故郷から飛び出しても自分の夢を追いかけても、新しい自分になれなかったのでしょう。
母親を堂下から守り、溜まっていた本音をぶちまけたことで呪縛を解くことができたのです。
もう雄二は過去を振り返る必要はありません。過去の物も不要です。
雄二はなぜ記事データを削除した?
記事データには母親をネタにした過去の産物が保存されています。
呪縛が解けた雄二にとって、それはまだとっておく価値があるのでしょうか?答えはもちろんNOです。
未来に生きる雄二には記事データなど不要。つまり記事データを削除するという行為は彼の過去からの脱却を表しているといえます。
紆余曲折ありながらも、やっと雄二たちは本当の意味で家族になれたはずです。
稲村家と堂下家の違い
親子の間に何やら問題を抱えている稲村家と堂下家は、同じような家族関係にも見えます。
ですが結果として稲村家は絆が深くなり、堂下家は関係にヒビが入ってしまったようです。両家の違いとは一体何なのでしょうか。
こはるの毅然とした態度
こはるは夫を殺したことで息子たちから非難を受けることもありました。世間から長い間嫌がらせを受けてきた彼らが母親を責めるのも理解できます。