この場面には大切なメッセージが含まれているにもかかわらず見逃す可能性が高い注意ポイント。
シャツの重なり方がジャックの部屋の時と逆になっていたことに気づいたでしょうか?
ジャックのシャツを包む様にイニスのシャツが重なっていいたのです。
つまりジャックの想いをイニスが受け止めて、それに応えているシーンであり、ここでようやく2人の恋が成就したと見ることができます。
価値観や立場が2人の仲を何度となく引き裂こうとしましたが、ジャックの死を機会に想いが重なったことをシャツが代弁しているといえるでしょう。
ジャック、永遠に一緒だよ
イニスがラストシーンでジャックに捧げた言葉には、どのような想いが込められているのでしょうか。
セリフを原文で見ると以下の文になります。
「Jack, I swear.」
引用:ブロークバック・マウンテン/配給会社:ワイズポリシー
直訳すると「ジャック、私は誓う」。こう見ると、イニスが何を誓ったのかが謎です。
これからは後悔しない人生を送ることを誓ったのか、もう自分を偽らないことをなのか…。
それを紐解くには、直近の話の流れを考える必要がありそうです。
娘の結婚報告
19歳の娘から結婚報告を受けたイニス。ジャックと初めて出会ったのも今の娘とほぼ同じ年齢でした。
イニスの脳裏にはきっとあの日の事が浮かんだのではないでしょうか。
そして結婚といえば誓いの言葉。“I swear”は永遠の愛を誓う時に使われるフレーズです。
つまりラストシーンは、ジャックとの結婚を誓ったと考えられます。
呪縛からの解放、そして自由
ジャックと結婚することは、自分をゲイだと認める行為であり、イニスがずっと拒んでいたことです。
もしイニスがもっと早く自分の恋愛を受け入れていれば、ジャックが生きているうちに一緒になれたでしょう。
2人で言えたはずの”I swear”を、もう会うことが叶わないジャックに向けて最後の最後に呟いたのです。
ブロークバック・マウンテンのまとめ
2人の男性が当時の社会の風潮に翻弄された同性愛映画として扱われがちなこの作品。
しかし彼らの恋愛は性別云々など関係ない普遍的な愛だったことは、観た人なら理解できたはずです。
雄大な山々から成る「自然」を舞台に育んだ愛が、人間の作り上げた「町」に戻ることで潰されてるという皮肉な対比。
多様性に富んだ現代だからこそ多くの人々に観て欲しい映画です。