宮部は戦闘機に対する卓越した技術と知識を持っています。
その腕前は、機体のさまざまな音を聞けば故障寸前かどうかが分かるほどでした。
特攻直前の宮部は、自分が搭乗する機体が故障寸前なのは見抜いています。それを大石に搭乗させることで、大石を救おうとしたのです。
好戦的だった大石との信頼
もともと大石は宮部を臆病者として見下していました。しかし宮部と接する中で、宮部を尊敬し始めます。
そんな大石は重傷を負ってまでも、宮部の命を救ったことがありました。
宮部は命の恩人である大石を助けるため、故障の可能性のある機体を大石にゆずるのです。
部下の一人でも生きていて欲しい
先述したように、宮部は部下想いの上司であり、部下に生き残ることを指導していました。
だからこそ、「自分の命」と「部下の命」を天秤にかけたとき、宮部は「部下の命」を取ったのです。
部下は自分よりも年下で、これからの未来を切り開く存在。しかも宮部は大石の戦後に対する想いを知っています。
戦争が終わったら、人の役に立つ仕事がしたいです
引用:永遠のゼロ/配給会社:東宝
宮部は自分が特攻として出撃し、戦争を終わらせ、大石の人の役に立つ仕事の最初の仕事依頼をするのです。
部下の多くが亡くなっている中、宮部はその一人でも生き残ってもらう、つまり自分の指導を守ってもらうため大石を助けます。
手紙の真意
大石が搭乗した機体には手紙が残されていました。
そこには宮部が大石に宛てて、妻と子どもを助けてあげてほしいという旨の内容が書かれていました。
宮部は妻との約束を、どう感じていたのでしょうか。
大石を通して魂は家族の元へ帰る
大石が宮部の家を訪ねて、松乃と出会うシーン。松乃は一瞬、夫が帰って来たかのように錯覚します。
この描写は宮部が魂となって、家族の元へ帰ってくることを表しているのです。
大石ほど自分を分かっている人間ならば、自分の魂を家まで運んでくれるはず、と宮部は思ったのでしょう。
これで宮部は妻との約束を果たそうとするのです。
大石ならできると思った根拠
先述したように、宮部は大石が戦後どんな仕事をしたいのか知っています。
「人の役に立つなら、まずは俺の役に立ってもらおう」と宮部は思ったかもしれません。
あわよくば、宮部の家族を守るために生きてくれれば、宮部にとってこの上ない安心を与える材料です(手紙にも記述あり)。
逆に、それを見届けるまでは宮部も死ぬに死ねません。
米空母に特攻する直前、孫の姿を見れて宮部は安心します。もしかすると、自宅を訪ねた大石の視点で妻の松乃も見たのかもしれません。
特攻兵の想いを一つの形として再現した映画
本作は戦争や特攻について、さまざまな賛否が飛び交う作品です。
そこについて言及するつもりはありませんが、宮部のような想いを持って特攻した人もいる「かも」しれません。
戦後から長い時間が経過し、当時の生存者も少なくなる中、戦争についてさまざまな視点から考え続けることが大切です。
その点、いろいろな意見が飛び交う本作は、ある意味今後の日本について考えるきっかけを与える作品なのかもしれません。