決めたらさっさと行動に移すというアクティブな魅力と、衣装化粧もレベルが高い。
シュガーはそんなジョーの気質に惹かれたと読み取ることが出来るでしょう。
二人の担当する楽器がそれぞれのキャラクターを物語っているとも推察できます。
音楽の主旋律も担当する花形、サックスプレイヤーのジョーに対し、あくまでも縁の下の力持ち的なサイドメンのベースのジェリー。
楽器に隠れキャラを設定して、観る人によってはとことん深い所まで考えさせる。どこまで洒落ている映画なのでしょう。
なぜモノクロ?
1959年製作のこの映画はもちろんカラーフィルム時代の映画です。
それを何故ビリー・ワイルダーはモノクロで仕上げたのでしょうか。せっかく衣装で賞もとっているというのに。
ポスターもカラーのものが多いのですが。その点、ワイルダーは以下のように語っています。
カーティスとレモンの女装がカラーで映ると非難の対象となるので、白黒にした(以下略)
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/お熱いのがお好き
これは当時映画界にあった「ヘイズ・コード」を恐れたものと思われます。
「ヘイズ・コード」とは1934年から1968年頃までアメリカ映画界に存在した、いわば倫理規定です。
特に性的表現については厳しかったようです。
「お熱いのがお好き」は、女装とはいえ「性的倒錯」の世界を取り上げていたためワイルダーとしては警戒したものと思われます。
しかし、皮肉なことに、
ビリー・ワイルダーの『お熱いのがお好き』(1959年)は女装を題材としていたことからMPAAの承認なしで上映されたが、
大ヒットしたためヘイズ・コードの威力は弱まった。
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/ヘイズ・コード
※MPAA=アメリカ映画協会
という結果になったのでした。そんなことなら最初からカラーでやって欲しかったと今なら思えます。
タイトルの謎
原題は”Some Like It Hot” 。邦題が「お熱いのがお好き」。どうしてこいうタイトルになったか、考えてみましょう。
タイトルはマザーグースのPease Porridge Hotの2曲目から来ている。
日本の「せっせっせ」に似た手遊び歌で、
Some like it hot / Some like it cold / Some like it in the pot / Nine days old
「お熱いのが好きな人もいれば 冷たいのが好きな人もいる 中には9日前から
鍋に残っているのが好きな人もいる」という意味
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/お熱いのがお好き
つまり、最後にオズグッドのセリフにあるように、愛の形は様々であり、相手がどんな姿であり職業であるかは関係ない。
そうした「愛の形の多様性」を表現したタイトルと捉えることが出来るでしょう。
まとめ
愛に純粋で、すっとぼけたシュガー、冗談ばかりいうけど芯は真面目で人が良いジェリー。
そしてガタイがでかい女装姿でも、結果的に愛に対してはひたむきになるジョー。
この3つのキャラクターが織りなすデコボコ恋愛コメディは、ツッコミどころ満載で、それをわかりつつ楽しむのがルールです。
だいたい、あんな大柄な化粧の濃い二人がずっと女性に化け続けられるとは思えません。
シュガーがジョセフィン(ジョー)とダフネ(ジェリー)を前にして、二人が男性だと気が付かないことはあり得ないでしょう。
でも、そこを突っ込んだらこの映画は面白くありません。
ドリフも真っ青な(こちらが本家ですが)ドタバタを楽しみ、恋のハッピーエンドを堪能すればそれでいいのです。
それが「お熱いのがお好き」なのですから。