出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B0000DJWIT/?tag=cinema-notes-22
近未来の日本のとある街「円都(イェンタウン)」がこの映画の舞台です。
「スワロウテイル」は1996年に公開されたので、2020年代に入った今がちょうどその近未来にあたるかもしれません。
監督 岩井俊二、主演 三上博史、CHARA、伊藤歩
第20回日本アカデミー賞で優秀賞(照明賞)、優秀作品賞、話題賞受賞。
第11回高崎映画祭 最優秀監督賞、最優秀主演女優賞(CHARA)、最優秀新人女優賞(伊藤歩)受賞。
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/スワロウテイル
そこは円で夢を叶えようと不法入国した外国人「円盗(イェンタウン)」達が、今日を生きるためだけに暮らしている無法地帯と化した街です。
今回はその円盗難民の中で上海系円盗のフェイホンと、グリコの兄で上海円盗団の流氓王リョウ・リャンキに注目して考察をします。
グリコのおまけ「アゲハ」
グリコと聞いてキャラメルを思い出す人は多いと思いますが、グリコの名前はそのキャラメルからとっています。
グリコのキャラメルには子供の夢の「オマケ」が付いていますが、グリコの胸にはアゲハ蝶のタトゥが施されていました。
アゲハ蝶のタトゥは夢に向かって羽ばたくように付いているのです。
グリコとフェイホン
グリコもまた、二人の兄と共に夢を得るために円都へ来たものの、溢れる難民達の中で死別や生き別れにならざるを得なかったのでしょう。
未来を見失った移民仲間達は自然と寄り集まるようになって、フェイホンとグリコもその中で知り合ったと思われます。
そんな中、フェイホンはグリコの魅惑的な歌声に未来を見つけ、いつしか彼女に夢を賭けていったのでしょう。
自分の分身「アゲハ」
グリコは名前もないみなしごの少女の名付け親になって一緒に暮らしました。
「アゲハ」はただの名前という意味以上に、アゲハ蝶の儚い運命のような象徴でありグリコの分身のようになっていくのです。
グリコは兄弟と死別や生き別れし孤独となって娼婦として身を落としたので、アゲハを同じ道に行かせられない気持ちになったはずです。
アゲハを娼宿から連れ戻したり、葛飾組のやくざに犯されそうになった時に助けようとしたのはそういう気持ちの表れだったのでしょう。
予期せぬ事件と円を生むカセット
むかしむかし、“円”が世界で一番強かった頃、いつかのゴールドラッシュのようなその街を、移民たちは“円都(イェンタウン)”と呼んだ。でも日本人はこの名前を忌み嫌い、逆に移民たちを“円盗(イェンタウン)”と呼んで蔑んだ。ここは円の都、イェンタウン。円で夢が叶う、夢の都。・・・・・・そしてこれは、円を掘りにイェンタウンにやって来た、イェンタウンたちの物語り。
引用:スワロウテイル/配給会社:日本ヘラルド映画
葛飾組のヤクザの男を死体遺棄した時に出てきたカセットテープが、タダの音楽テープでなかったことには驚いたのではないでしょうか。
偽装一万円札の磁気データで「円」を大量生産できたのが、かりそめの夢を見させて悲劇を生む始まりです。
このカセットテープは円を生んだだけではなく、そのテープで人の心や絆ゆくゆくは自由までもがんじがらめに絡めてしまったといえます。
偽札でつかんだ「偽の夢」
フェイホンの夢は円を稼いで大金持ちになって故郷に帰ることでしたが、グリコと出会い彼女に歌の才能があることを直感でわかったのでしょう。
なんでも屋「あおぞら」で日々の暮らしに疲れた仲間を相手に、グリコが歌で癒している姿をみてフェイホンの夢はいつしか変わったのです。
フェイホンの夢
音楽のことをまったくわからない素人のフェイホンは、グリコの歌声を世間に知らしめ稼ぐという単純な発想でライブハウスを開店させました。