自分の娘の姿を思い浮かべていたのかもしれません。
最後まで愛のために生きた達成感だけをかみしめていたように思われます。
里美への寄付にこだわったマリの心情
自分の娘とは関係のない家族に現金を寄付したマリ。
どうして他人である里美への寄付にこだわったのでしょうか。
そこにあるのは、里美と我が子を重ね合わせて感じた親の愛情を、形にして残したかったマリの心情です。
マリは無記名で探偵を通じて現金を届けますが、本当は会って自分の手で渡したいに決まっています。
里美と家族の喜ぶ顔を直接見たかったはずです。
マリが自分の気持ちを抑えた理由は、犯罪者になってしまった姿を見せたくない思いが強かったからと考えます。
自分が悪者になって静かに里美の記憶から消えることを望んだのです。
里美に届いた現金に犯罪が絡んでいると思われないように、出どころを隠そうとしたのかもしれません。
マリにとって命を燃やすものとは家族のぬくもり
探偵は、傷ついて疲れ切ったマリに、命を燃やすものに必ず出会えると伝えます。
マリが出会った命を燃やすものとは、実の家族のような愛情ではないでしょうか。
里美と実の親子のような愛を実感し、探偵に父親の面影を見たマリは、失った家族を取り戻した感覚に浸ることができたのです。
探偵に見た父親の面影
自暴自棄になったときに、助けてくれて自分に意見してくれた探偵に、マリは父親の影を見ていたのではないでしょうか。
十代のころからの殺伐とした人生をすごしてきたマリは、素直に人に接する気持ちを忘れていたようです。
常に本音で人に対応する探偵に優しさを感じ、時には叱責(しっせき)されて徐々に人としての素直さを取り戻していくマリ。
最後の命を懸けた取引に手助けを願い出た時、マリの中に初めて本心をさらけ出す勇気が湧いてきたのでしょう。
探偵との2度の偶然の出会いは、マリにとってかけがえのない人生の変換点だったのです。
家族との悲しい別れを2度経験したマリの気持ち
マリの子供がどうなったのかは、はっきりと劇中では語られていません。
状況から察するとマリの子供は死産で、出産時の重篤な事態が余命宣告を受ける程の重病に陥ったと考えられます。
過去に一家心中で家族を無くしたマリにとっては、人生で2度も家族を失う悲劇に遭遇したのです。
マリの家族を欲する思いの深さは、想像をはるかに超える悲しい経験の裏返しと思われます。
たとえ他人でも、里美のために命を懸けるマリの心情は、強い家族への思いと亡くした我が子への追憶が根底にあるのです。
まとめ マリの人生
最後に自分の思いを遂げたマリ。彼女の人生は幸せだったのでしょうか。
家族のぬくもりを追い続けても手に入れられなかったマリ。
見ようによっては不幸な一生だったようですが、探偵や里美に家族のぬくもりを感じられた数日間は幸せな時間だったでしょう。
他人のために命懸けで犯罪を犯すという常識から逸脱した行為も、マリの悲しい過去と心情を考えると理解できます。