まず大きく引っかかるのが前半で示された「ヴェラのいうことを聞くな」の意味です。

前半がベスが作り上げた空想でしかないことを踏まえると、これはベスの潜在意識の具現化だったのでしょう。

後半でベスが空想から目を覚ましたときヴェラは「やっと気付いた」と口にしています。

つまりヴェラのいうことを聞いてしまうと辛い現実が待ち構えており、それに気付きたくないのです。

そしてまた同時に母に自分だけを見て欲しかったという承認欲求もあったことでしょう。

ベスの母に対する思いがそれだけ重く、しかし同時に深いものであることがこの台詞からも分かります。

暴漢二人

文庫 他人を支配したがる人たち (草思社文庫)

そしてもう一つ、そもそも二人の姉妹を襲った暴漢二人は何だったのでしょうか?

しかも片方は女装までして、かつ後半のシーンでは人形に近い格好を姉妹にさせています。

これは恐らく「女性から見た男性」のやや極端なカリカチュアであったのかもしれません。

男性という生き物はどんなに時代が変わろうと女性に対して支配欲が潜在意識としてあります。

そして人形のコスプレをさせたり暴力を振るったりすることは支配欲の顕在化でもあるのです。

またその意味では女装した男性も根っこの部分で男性であることを捨てることは出来ません。

暴漢二人の人となりは語られていませんが、「男性の支配欲」の具現化ならこのような表現になるも当然です。

女性解放運動

女性解放へ―社会主義婦人運動論 (1977年)

数々のホラー演出や暴力描写で塗された「ゴーストランドの惨劇」の真意もここまで来ると見えてきます。

本作が目指そうとしたもの、それは二人の姉妹を通しての女性解放運動だったのではないでしょうか。

現代社会では女性の社会進出が目立ってきて男女平等からの女性優位な社会になったかのようです。

しかし、まだまだ世界の政治・経済をはじめ主要の部分を動かすのが男性なのは変わりません。

かといってそれを口実に男性が理不尽に女性を支配することも、その逆もあってはならないのです。

本作が描こうとしたのはそうした実に真っ当なヒューマニズムだったのでしょう。

まとめ

ゴーストランドの惨劇 [Blu-ray]

いかがでしたでしょうか?

「ゴーストランドの惨劇」はその過激な暴力描写と巧みなストーリーテリングに惑わされそうになります。

しかし、それらの殻を取っ払って本質を見ていくと、実に温かく優しいヒューマニズムがあったのです。

そしてまた極限状態においてこそ、人間はその真価を問われ試されていることも克明に描き出しています。

そこまで真に迫る物語であることこそが何よりも本作最大の価値でありましょう。

表現方法こそトリッキーではあるものの、中身は非常にストレートな王道の名作です。