しかし、後半ではネスに追い詰められどんどん余裕を失っていき、行動も性格も矮小化していきます。
カポネは十分に下積みをしていたとはいえ、26という若さでいきなり組織の長となりました。
人をまとめる立場を経験したことがない者がいきなり下っ端からトップに立てばどうなるか?
当然その力を持て余し、横暴に振る舞った結果最終的に自滅していく他はありません。
シカゴのマフィアボスという器は彼にとっては余りにも分不相応過ぎたのです。
部下をバットで殴った意味
カポネの性格を分析した上で、いよいよ本題に入っていきます。
彼は何故食事中に部下をバットで殴ったのでしょうか?
物語としての意味
このバットによる幹部殺害はノンフィクションとして現実に起こった出来事です。
しかし、その理由が実は「アンタッチャブル」と実話のそれとで大きく違っています。
物語としての解釈は幹部達によって不義理を働かれてしまったからで、この台詞からも明白です。
チームが勝たなきゃ何にもならん
引用:アンタッチャブル/配給会社:パラマウント映画
そう、部下達は宿敵であるネス率いるアンタッチャブルに密造酒を押収されてしまう失態をやらかしました。
物語としては部下達の不義理が許せなかったことが最大の要因であるとするのが妥当でしょう。
実話としての意味
もう一つが実話としての意味ですが、こちらの方が遥かに残酷で恐ろしいものでした。
何と、部下三人達は密かにカポネの暗殺を目論んでいたというのです。
つまり失態ではなく裏切りを恐れてわざと晩餐会を設け、食事中ではなく食後に殺しました。
かつそれでも中々死なないから、トドメに後頭部を銃で撃ってすらいます。
現実は小説より奇なりとは正にこのことですが、どちらにしても如何にカポネが人望のない人だったかということです。
全盛期のカポネの残虐さ
そして、このワンシーンに何よりも凝縮されていたのはカポネの残虐さでありましょう。
自分が生き延びるためなら部下を笑いながら殺すことが出来る、その狡猾さと残忍さは類を見ません。
この狂気じみたカポネをロバート・デ・ニーロが非常に上手く熱演しており、映画史に残る名カットです。
同時にカポネのピークはここで極まり、以後辿っていく栄枯盛衰の運命の予兆を示しているようにも見えます。
銃撃戦
「アンタッチャブル」を象徴する名場面といえばもう一つ、やはり階段の銃撃戦でしょう。
凄まじく濃密な緊迫感をもって撮られたこの場面は一体何を意味していたのでしょうか?
「オデッサ」の階段のオマージュ
一つ目の解釈はもういわれ尽くしている「戦艦ポチョムキン」のオデッサの階段のオマージュです。