そんな一度地に落ちた白人ラッパーをエミネムが本作を通して復権させたのではないでしょうか。
彼の存在があったからこそ今白人・黒人を問わず様々な人種が楽しめる普遍的な音楽文化になったといえます。
Lose Yourself
本作の最後にはラビットが主題歌「Lose Yourself」を高らかに歌い上げます。
世界的大ヒットを記録したこの主題歌の真意は果たして何なのでしょうか?
チャンスの神様は前髪しかない
本歌で歌われているのは「チャンスの神様は前髪しかない」というメッセージです。特にこの部分に注目しましょう。
Look, if you had One shot Or one opportunity
To seize everything you ever wanted
In one moment Would you capture it
Or just let it slip引用:Lose Yourself
彼はこの歌詞において「どんな時もチャンスを掴むときは一瞬しかない」と高らかに歌い上げています。
これはラビット=エミネム自身の人生が環境に恵まれず、背水の陣の如き生き方をしてきたからでしょう。
確かにどんな人にも平等にチャンスは与えられます。しかしそれを生かすも殺すも全ては自分次第です。
チャンスというものの重さ・大切さがこの歌詞には切々と込められています。
自分への戒め
最終的なこの歌に込められた真意はラビット=エミネム自身への戒めだったのではないでしょうか。
本作でもラビットは一度は不安や恐怖、先入観など様々なプレッシャーから掴めたはずのチャンスを逃してしまいます。
そんな弱かった頃を自虐ネタとして扱いつつ、しかしそれをただの自虐で終わらせず反骨精神へ昇華しています。
つまりこの主題歌の真意はラビット=エミネム自身にとって一つの「けじめ」であり、同時に「決意」なのです。
ラッパーとして売れてきたこの時期だからこそ、今後自分がどうしていきたいのかと向き合う必要があったのでしょう。
そこまで深く、そして熱く魂を削って歌い込んだからこそこの歌は世界中を震撼させることが出来たのです。
人生に必要なのは飢餓感
ラビット=エミネムの生き様にはまた人生に必要なのが実は「飢餓感」であるということが分かります。
彼がここまでのし上がってこられ、今や世界を股にかける超一流のラッパーになれたのは何よりもこの飢餓感です。
常に何か足りない、前を向いてがむしゃらに命を削り、今の自分に満足などせず何かを作り続けていく。
そういう人生を生きていく上で一番必要な精神を本作はエミネムの自伝という形でダイレクトに伝えてくれます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
「8Mile」という作品はややもすればエミネムを格好良く撮っただけのアイドル映画と揶揄されがちです。
しかし、そこに描かれている物凄く本質的かつ普遍的な人生を生きていくエッセンスは我々を鼓舞してくれます。
彼がいうようにどんな人にも平等にチャンスは与えられており、それを掴むか逃すかという二者択一です。
そのような泥臭い人間讃歌の作品であると同時にラップというジャンルの本質すらも明らかにした名作ではないでしょうか。
生きていくのが難しいこの世の中にあってもエミネムのように常にがむしゃらに挑み続ける心を忘れずにいたいものです。