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2020年4月公開の007シリーズ最新作『ノー・タイム・トゥ・ダイ』でジェームズ・ボンド役の引退を表明しているダニエル・クレイグ。
通算5作目の出演となるクレイグ版ボンドのベストは何といっても『007 スカイフォール』でしょう。
今回はそんな007シリーズのグレイグ版の最高傑作『007 スカイフォール』について、タイトルの真の意味を考察していきます。
また、シルヴァとの関係やボンドの過去が本作に及ぼした影響についても解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
【シリーズ初のオスカー監督】
これほどの成功を収めた理由の1つが監督にサム・メンデスを招聘した事です。
英国演劇界を代表する名演出家であり、映画デビュー作『アメリカン・ビューティー』でいきなりオスカーを獲得した天才監督。
彼がアート映画の文脈で007シリーズにアプローチをしており、これまでにない美しい映像と示唆に富んだ脚本で映画を豊かにしているのです。
007は時代遅れなのか?
映画は前半、“時代遅れ”扱いされるジェームズ・ボンドが描かれています。
ある事故をきっかけに重傷を負い一線を退いていたボンドは劇中ではすでに過去の人ですが、今回の活躍も目覚ましいものがあるでしょう。
しかしテロの脅威を前に現場復帰を目指すも、既に若くもなくかつてのような力を出す事はできないのでは、と見ている観客も不安になります。
そんな彼をあざ笑うように強敵シルヴァがイギリスを混乱に陥れていき、そこからのボンドの復活劇が見事に描かれていくのです。
2000年~2010年代アクション映画の変遷
それは公開当時の007シリーズを取り巻く環境とも重なります。
ダニエル・クレイグは2006年に『007 カジノ・ロワイヤル』で6代目ジェームズ・ボンドとしてデビューしました。
そして従来とは異なるハードボイルドなボンド像が絶賛を浴びたのです。
アクション描写はスパイ映画『ボーン・アイデンティティー』から始まる“ジェイソン・ボーン”シリーズを追随する形でした。
早いカット割り、編集、フィジカルアクションなどはまさにそうです。
しかし『007 慰めの報酬』ではより明確にこの新トレンドをフォローしますが、映画は興行、批評面で不発に終わります。
ダークナイト・メソッド
さらに2008年にはクリストファー・ノーラン監督がアメコミ映画をリアリズムで描いた『ダークナイト』が社会現象級の大ヒットを記録。
娯楽映画のトレンドはリアル・ダーク路線へと移行していきます。
タキシードを着た敏腕スパイが秘密グッズを駆使して世界をまたにかける007シリーズは古臭い過去の遺物となってしまったのです。
ターナーの絵
『007 スカイフォール』にはボンドの旧さを印象づける演出が何度も出てきます。
復帰テストをパスしたジェームズ・ボンドがロンドンのナショナルギャラリーに展示してある絵『戦艦テメレール号』を前にしたときもそうです。
晩年のこの作品は1805年の“トラファルガー海戦”で活躍した軍艦が老朽化による解体のため、小型の汽船に曳航される姿が描かれました。