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映画「アフタースクール」は内田けんじ監督三作目の作品です。
本作の大きな特徴は何よりも終盤に向けて展開されていくどんでん返し、これに尽きます。
それは「甘くみてるとダマされちゃいますよ」というキャッチフレーズに象徴されている通。
内容は社会人として全く別の道を歩んだ三人の同級生を巡る奇怪な「大人の放課後」です。
成り立たせるための用意周到な伏線、そしてラストで生じる大逆転劇は見応え抜群でした。
今回はそのどんでん返しを生かすための“思い違い”について徹底考察していきましょう。
また写真を危惧した理由や木村が劇中起こしていた謎の行動にも迫っていきます。
アンジャッシュ方式
「アフタースクール」の大きな特徴であるどんでん返しはいわゆるアンジャッシュ方式といえるものです。
お笑いコンビ・アンジャッシュについて少し説明すると、彼らの笑いの源は“思い違い””すれ違い”にあります。
ちょっとした言葉の綾や違う意味を含む表現でズレを生み出し、そのズレが誤解に誤解を生む方式です。
本作の場合は更にそこに真相が終盤まで謎のままにすることで幾重にも裏切られることになります。
ただのどんでん返しに終始していない理由はこの「アンジャッシュ方式」を洗練させて用いているからです。
思い違い
「アフタースクール」のどんでん返しがアンジャッシュ方式にあることは分かりました。
では、本作における”思い違い”とは果たしてどのようなものだったのでしょうか?
少しずつその構造を紐解いていきましょう。
木村と美紀は夫婦
「アフタースクール」で一番の核になっていた思い違い、それは木村と美紀の二人が夫婦というものでした。
仕掛けからして用意周到で、中学時代の木村と美紀から現在の木村と美紀に重ねる形にしています。
更にそれだけではなく、今度は神野と北沢のやり取りにおいてもそれらしいやり取りがあるのです。
「子供生まれたんだ、今朝」
「子供?」
「木村から何も聞いてない?」
「ああ、ここ2、3年御無沙汰していて全然」
「そうか。島崎って佐野さんと同じクラスだった?」
「佐野さん?」
「佐野美紀だよ。覚えてる?」
「おお、なんとなく」
「佐野さんがお母さんになったんだよ。病院行ってみる?」引用:アフタースクール/配給会社:クロックワークス
そう、ここであたかも北沢は木村と美紀が夫婦であるかのように仕向けています。
しかし、よく見ていくと実は「木村と美紀が結婚した」などという趣旨の発言はありません。
まずここで北沢をはじめ受け手もまた木村と美紀が夫婦であるという思い違いをしてしまうのです。
似て非なる二枚の写真
そしてもう一つ、二人が夫婦であるという思い違いが生まれたのは神野がメグに見せた写真です。
神野が見せたのは謎の女田畑智子ではなく出産時の美紀の写真でした。
更にそこで北沢が動揺する場面を入れることで、田畑智子があゆみであるという錯覚が生まれます。