少女ながらにエリザベスはその辺りも見極めて、父の秘密を悪用しない人を慎重に見極めたのでしょう。
ネイサンの戦い
エリザベスが「父の罪」と向き合う一方で、ネイサンは娘を人質に取られました。
果たして、彼にとってのこの犯罪組織との対決は何を意味していたのでしょうか?
「父親」と「医者」の狭間で
一番の急所を突かれたネイサンが戦っていたものは「父親」と「医者」の葛藤ではないでしょうか。
人質に取られた以上勝手な身動きは出来ないから、「医者」としての理性ある振る舞いが求められます。
しかし、だからといって「父親」として娘を死なせてはならないという感情面もまた大事なのです。
医者の場合は特に人の命に関わる公人でもありますから、尚更タフな精神力が要求されます。
携帯電話を捨てた理由
ネイサンは精神状態ギリギリまで追い込まれた末携帯電話をゴミ箱に捨てました。
ここで彼は通りがかりの人の電話を取ってこういいます。
医者だが緊急事態で電話を借りる
引用:サウンド・オブ・サイレンス/配給会社:20世紀フォックス
そう、ここで彼は「医者」から「父親」へとその顔を変貌させたのです。
つまりこの瞬間に「理性」を捨て「感情」を前面に押し出しての振る舞いが多くなります。
車で突っ込んだ挙句ボートに勝手に乗って行くのですから、とても医者とは思えない荒々しさです。
墓地で待ち受けていたもの
ネイサンとエリザベスはとうとう犯罪組織の待ち構える墓地へと駆けつけます。
そこで待ち受けていたものは一体何だったのでしょうか?
人形と赤いダイヤ
ネイサンとエリザベスは墓地にて娘のジェシーと再会し、そこで人形を手にします。
苦難の末に見つかったのは人形とその中に袋詰めにして入っている赤いダイヤでした。
人形と赤いダイヤは母親の子宮と赤ん坊のメタファーではないでしょうか。
それらが墓地に埋まっているということはそこはきっと天国と地獄の境目なのです。
その状況と重なるようにネイサン達は生きるか死ぬかの選択をコスターから迫られます。
コスターとエリザベスの父
そして見事にネイサンはダイヤよりも娘ジェシーとエリザベスの命を取りました。
反対にコスターは赤いダイヤという欲望を選び取ってしまったのです。
ここでエリザベスはかつてのトラウマを呼び起こし、今度こそ父の罪と向き合いました。
同時にそれは犯罪に身を染めてしまった父の供養でもあったのではないでしょうか。
エリザベスが真に向き合っていたものが今ここでやっと一つの決着を見たのです。