純を助けられなかった罪悪感は、青山を助けることで多少拭われるのです。
小池栄子が演じる大場玲子(孤児院長の娘)の話の中に、ヤマモトも救われたことが語られます。
だからこそヤマモトも、玲子も、青山に感謝の言葉を述べるのでした。
やはりヤマモトが青山に近づくのは、青山を救うことで自分自身も救われるからなのです
バヌアツへ誘う理由
玲子がヤマモトから預かったバヌアツの子どもの写真をヤマモトに渡すシーン。写真裏にはこのようなメッセージがありました。
俺の天使たちやこの子らと一緒にお前も笑ってみいへんか?
引用:ちょっと今から仕事やめてくる/配給会社:東宝
結局青山はバヌアツまで出向き、ヤマモトと一緒にバヌアツで、人生を作り直すことを決めます。
ここで映し出される情景や人物たちこそ、ヤマモトが青山をバヌアツに誘う理由です。
青山もバヌアツに憧れていた?
青山が山上に辞職を申し出たシーンで、青山から語られる内容にはすでにバヌアツのような場所を求めていたことが分かります。
でもこれからは、青い空をいつも見て笑って、自分に嘘をつかないで生きていきたいんです
引用:ちょっと今から仕事やめてくる/配給会社:東宝
まだバヌアツに行くことも決めていないはずの青山ですが、このシーンではすでに「青い空」を求めていたことが分かります。
ヤマモトは青山の求めていることが分かっていたので、バヌアツへと誘うのでした。
ブラックとスカイブルーの対比
ヤマモトと出会ってショッピングカートで遊ぶ、青山が自殺を思いとどまる、バヌアツに行く、すべてのシーンに共通することがあります。
それは作品の中でも重要なシーンであることと、真っ白な雲とスカイブルーが広がる情景が映し出されていることです。
この映像には「ブラック」な企業との対比がされていると思われます。
バヌアツでの空は、青山が「ブラック」から解放されたことを意味しているのです。
そんなバヌアツの空を知っているからこそ、ヤマモトは青山をバヌアツへと誘うのでした。
純粋無垢な子ども
青山は日本のブラック企業で、嫌と言うほど人間の「ブラック」な一面を見てきました。
それはパワハラ上司だけでなく、尊敬していたはずの五十嵐先輩も同じくです。
一方バヌアツの子どもは、純粋無垢で「ホワイト」な子どもであると言えます。
ブラック企業の対比は、このような人間関係におけるホワイトさとも対比されていたのです。
依然として高い自殺者数や離職率の日本とはかけ離れたバヌアツこそ、ブラックにまみれた青山が安心して暮らせる場所。
そうヤマモトは思って青山を誘ったのでした。
『ちょっと今から仕事やめてくる』
作品タイトルのような言葉を放つことのできる環境・状況はどれくらいあるでしょうか。
また、そのような発言ができるほど私たちに勇気があるでしょうか。
現状に満足しているならば良いのですが、一歩踏み出して新しいものを求めることも一度きりの人生を楽しむ方法。
作品を通して、ヤマモトはただ単に「笑顔が大事」と伝えているのではなく「笑顔でいられる状況を作ることが大事」と伝えています。
これは私たちにも語り掛けているのかもしれません。