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放映中に話題になったこともさることながら、金曜ロードショーでも幾度も放送された超有名作「サマーウォーズ」。
この作品で細田守監督は初めて人の死を描きました。
これまで描いてこなかった人の死を今回の映画に含めた理由とは一体なんだったのでしょうか。
また逆に死を作品で扱うことを避けていたのはなぜだったのでしょうか。
栄おばあちゃんの死が物語にどんな影響を与えたのかも併せて徹底解説します。
細田監督の葛藤
今回の映画で初めて人の死を描いたということですが、逆になぜ死を描かなかったのでしょうか。
子供向けにアニメーションを作ってきた監督にとって、子どもたちに死を見せることに抵抗があったそうです。
また今まで死を描かなったことへの自負もあり、本当は今回も死を描く予定ではなかったとのこと。
確かに死は悲しいものではありますが、否定的な要素しか持っていないわけではありません。
新しい命の誕生をイメージさせたり、悲しみから這い上がろうとする力をもたらしてくれる側面もあるのですから。
そのような肯定的な面を観る者が受け取ることができれば、監督のこのチャレンジも活きてくるのではないでしょうか。
展開的必要死
細田監督の今までの作品はそれぞれの生き方を肯定するものばかりでした。
そのような作品には物語的な「必要死」を用いる必要がなかったといえます。
何か苦難があれば、それを乗り越えるたび人は強くなります。またその苦難が大きければ大きいほど成長できるでしょう。
陣内家の一人一人を成長させるために必要だったのが栄おばあちゃんの死。
つまり死を初めて描いたのではなく、初めて描かざるを得なくなったのです。
この作品を観た人の中にも、なぜ栄おばあちゃんが死んでしまうのか残念に思った人も多かったでしょう。
しかし物語の展開上どうしても死ぬしかなかったのです。
崩れていく家族
由緒正しき家柄で血縁者の仲も睦まじい陣内家ですが、そこで唯一はじき者にされているのが侘助です。
家族の非難を一身に背負い十年前に姿を消し、そしてまた突然姿を現した侘助に陣内家は揺らぎます。
なぜなら、侘助なしで栄おばあちゃんを中心として陣内家は完成していたからです。
完成形に対して、戻ってきた侘助は邪魔者。家族の絆にひびを入れる存在になります。