こうしたことを考慮すると、ヘドラとはいうなればもう一人のゴジラです。
ヘドラに込められたもの
成長を続け、打撃や放射火炎も通用せずゴジラを苦しめるヘドラ。
何よりも厄介なのはその生命力です。
身体がヘドロでできており、どんなに千切れてもダメージがない。
苦戦の末に何とか倒されますが、今までにないほどのダメージを受けるゴジラ。
このヘドラの生命力は、一度起こった公害は簡単には収まらないことの比喩。
映画のラストに新たなヘドラが登場するのもそのためです。
正義のヒーローとなったゴジラ
傷だらけになりヘドラと戦うゴジラ。
その姿はヒーローを思わせる物でしたが、人間への憎悪も持っていました。
少年の憧れるゴジラ
ゴジラが自分を脅かす者と戦った結果、人類のためになったというのがこれまでの作品です。
しかし、本作ではゴジラのヒーロー性が高められていました。
ゴジラが好きな少年・矢野研の思いに応えるように登場するシーンにそれが表れています。
既に誕生して17年。
高い知名度と人気を誇るゴジラは子ども達の間では悪にはなりえなかったのです。
公害を憎むゴジラ
監督を務めた坂野義光監督はこの映画でゴジラに空を飛ばせます。
そうしたヒーロー性が高い演出のある一方、人類への憎悪も持ち合わせています。
矢野研少年の夢でゴミに火炎を吐くシーンにそれが示されています。
また戦う際もヘドラを振り回し、千切れたヘドラの体で犠牲者が出ていました。
ゴジラに人間の都合は関係ありません。
そうした荒々しい戦い方から、ヘドラへの憎しみと人類への憎しみを読み取れます。
「ゴジラ対ヘドラ」が伝える物
それらは人間の科学の負の面は簡単には消えないことの象徴です。
駿河湾が浄化されるにしても相当な時間がかかるでしょう。
それまでに新たな個体の他にさらに第3、第4のヘドラが出現しない保証はありません。
ゴジラが人間を睨むラスト。
その目でゴジラに見られなくなるためにはこれからの努力が必要であることを作品は伝えます。
ゴジラシリーズの中で最も当時の時代を反映した「ゴジラ対ヘドラ」。
一方、人類の愚かさを描いたゴジラシリーズの原点に戻った作品でもあります。
公害問題は今も世界のどこかで発生しています。
時代を越えてメッセージを発し続ける本作。
人間について普遍的な問いかけを持つ力強い作品なので、是非観てみませんか。