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2019年公開のホラー映画「アス」、「ゲット・アウト」を代表作に持つジョーダン・ピール監督作品です。
非常に凝った構成で作られ、ある家族のドッペルゲンガーが襲いかかる前代未聞の展開になっています。
後半に向け段々と明かされていく自分たちの偽者の真相、そしてそこから見えてくる恐怖の正体。
批評家からの評価も軒並み高く、興行収入も公開初週末に7111万ドルを叩き出しています。
ただの娯楽作品に留まらない深いメッセージが本作には数多く盛り込まれているのです。
本稿では殺戮を繰り返す恐怖のドッペルゲンガーの正体をネタバレ覚悟で解説していきましょう。
また、ミラーハウスに迷い込んだ者達の末路なども併せて考察していきます。
人間の二重性
ドッペルゲンガーも含む本作全体の構造は人間の二重性が前面に押し出されているということです。
それが特に強く表れているのがドッペルゲンガーとハサミという凶器になります。
ドッペルゲンガーの映画は沢山ありますが、本作はそれを邪悪な自分の分身と定義していました。
そしてもう一つがジョーダン・ピール監督が意図的に恐怖の象徴にしているハサミなのです。
ハサミとは日常で子供でも扱える刃物ですが、即座に凶器となってしまう恐ろしさもまたあります。
そのような二重性を強く押し出したことでひと味違う奥深さを持ったホラー映画となっているのです。
ドッペルゲンガーの正体
本作はラストでウィルソン一家を襲ったドッペルゲンガーの正体が判明します。
見た目がそっくりなもう一人の自分たちである彼らの正体は何なのでしょうか?
あらすじを振り返りながらじっくり解説・考察していきましょう。
地下に住むクローン
まず本編で明示されているのはアメリカ政府が作り出した地下に住むクローンです。
しかもただのクローンではなく、何と母アデレードは本物と入れ替わったレッドでした。
つまり夫のゲイブら残りの三人からすればアデレードは身内ながらに敵だったのです。
この設定が明かされることで本作の背骨がグッと浮き上がる仕組みとなっています。
最大の敵はもう一人の自分自身をまずこの設定からしっかり作り上げていたのです。
富裕層と貧困層
これもまた明確に打ち出されており、富裕層と貧困層という経済格差の象徴でもあります。
レッドとして生きたアデレードが生のうさぎを食べてきたということが全てを表現しているのです。
アメリカに限らず、誰かが裕福に暮している陰で誰かが貧しさに苦しんでいます。
そして、もしその苦しんでいる人がもう一人の自分自身だったらどうなのでしょうか?
誰しもが蓋をして逃げている格差社会と向き合うことにこそドッペルゲンガーの本質があります。