有名人である彼が起こした事件となれば、首相暗殺という衝撃をそちらにすり替えることができます。

これこそが森田の言った『オズワルドにされるぞ』というセリフの真意なのです。

金田総理が死んで一番得をするのは次期首相候補である海老沢幹事長です。

原作のもとになった『ケネディー大統領暗殺事件』の黒幕もジョンソン副大統領だと噂されました。

しかし、アメリカ国民はオズワルドが殺されたことに恐怖を抱くだけで、黒幕の存在には目を向けませんでした。

その民衆心理をなぞるには暗殺犯は有名人というマスコミの煽りが必要なのです。

自首させるのが絶対条件

黒幕は青柳をどうしたかったのでしょうか。

犯人に仕立て上げて捕まえるだけではなぜダメなのでしょう。

そう考えると『ケネディ暗殺犯オズワルド』がまたしても浮かびます。

捕まえても「自分は犯人じゃない」と青柳が主張しては面倒なことになると考えても不思議ではありません。

自首させて犯行を認めたことにしてから射殺してしまえばよいのです。

警官でも平気で撃ち殺してしまう彼らなら理由など何とでもなります。

オズワルドを殺したジャック・ルビーのような役回りを誰かに背負わせても良いかもしれません。

どんな方法であれ『首相暗殺犯の青柳』は死んだという事実が残れば成功です。

そのためには青柳の自首が絶対条件となります。

なぜ青柳は整形した

ゴールデンスランバー-~オリジナルサウンドトラック~-斉藤和義

青柳はなぜ整形したのでしょうか。

隠れるだけなら顔まで変える必要はないはずです。

隠れていればいずれほとぼりは冷めます。

ほとぼりを冷まさないために隠れてはいられなかったということです。

表に出て為すべきこと』を為すために整形したのではないでしょうか。

『何故このようなことに巻き込まれたのか、だれが仕組んだのか』を解明しなくては逃げ延びたことにはなりません。

復讐のために殺すのではキルオになってしまいます。

青柳の殺し方は社会的抹殺です。

相手を抹殺する証拠を揃えるために、まず青柳雅晴という自分を消し去る必要があったのでしょう。

青柳は整形して別人となりルポライターとして取材を重ね『黒幕』を探し続けました。

それが原作の『事件から20年後』の記事です。

ラストシーンのデパートで整形後の青柳の顔が『よくできましたスタンプ』によって一瞬もとに戻ります。

顔は変わっても青柳雅春の『習慣と信頼』は変わらずに生きていることを表現する素敵な演出でした。

変わったのは顔だけで青柳は青柳のままです。

民衆はマスコミに煽られただけでまた日常に戻ります。

しかし青柳が記事を出し続ければ事件は風化しません。

キルオを含め当時の自分を助けてくれた人たちの信頼に応えるにはこの方法しかないと思い定めたのでしょう。

ここで題名の『ゴールデンスランバー』の真意が見えてきます。

青柳だった幸せな時期は彼にとって『うたた寝をしていた最高の時間』でした。

整形によって青柳雅晴を捨てた瞬間に『うたた寝から覚めた』のです。

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