それは、精神疾患の患者の人権を無視した当時の社会への復讐です。
エドワード(偽)は精神疾患であるがゆえ、さまざまな嫌な思いをしてきていると考えられます。
- 自身が精神病院に入れられていたこと(体に無数の傷跡あり)
- イライザに対する大学教授(本物のエドワード)の扱い方
映画の舞台である1899年のイギリスを含むヨーロッパは、人権への考え方において世界でも先進的と言われるほどの国でした。
しかし精神疾患の患者は、その社会でも人権的な扱いを受けていません。
だからこそエドワードはイライザの救出と、精神病院への報復攻撃をするため、病院を訪れるのです。
精神科医エドワード(本物)の目的
イライザには精神病院に入る前から夫がいました。その夫が映画終盤では、精神科医であるエドワード(本物)を連れてやってきます。
このエドワードは、なぜ夫と一緒にイライザの元へ訪れたのでしょうか。
ロボトミー手術の実験
映画は1899年のクリスマスイブという設定です。この30年後にはロボトミー手術という、精神外科の手術方法が確立します。
これは脳の前頭葉を切り取る手術で、これで精神疾患の患者を「大人しくさせる」という恐ろしい手術でした。
後にその残虐非道さと、治療と言うには程遠い手術方法にロボトミー手術は行われなくなります。
映画当時ですら「頭に穴を開けると悪魔が取り払われる」という考え方がありました。
つまりエドワード(本物)は、これらの実験にイライザを使用したい、と思い病院を訪れたのです。
ちょうどこのころの精神科手術は過渡期を迎えていて、当時の主流が映画内でも出た「電気手術」。
その後には先ほど出た「ロボトミー手術」が確立されます。精神科手術の過渡期であるからには、医者から見ればサンプルがほしいところ。
やはりエドワード(本物)は、そのサンプル集めのためにイライザを手に入れたいと思っていたのです。
欲望の探求
イライザは精神疾患がありながらも、その美貌は誰もが認めるところでした。
この1899年頃の精神疾患に対しては、まだ知識不足のところも大いにあり、現在では拷問とすら思える治療が行われています。
その一つに性的なトラウマを抱える女性に対して、その体験に似たことをさせることで壁を乗り越えさせるという治療法がありました。
エドワード(本物)は、イライザの美貌にほれ込んでおり、治療と称して性的暴行を加えようと思っていたと考えられます。
そこでイライザの夫と、金銭か何かの取引をしたのでしょう。
そうすれば夫がイライザに固執して、絶対に家に帰させるよう手紙を何度も送っていた説明がつきます。
ラムと少年の関係1:軍医と兵士
ラムは少年兵の写真をエドワードに見せられ、錯乱してしまいました。
確かにラムはもともと精神疾患を持った患者です。そのラムが現在では、精神病院を支配し、医者らしく振舞っています。
そのラムがなぜ医者らしくいられるのか、そして少年兵を見てなぜ錯乱するのでしょうか。
ラムは元軍医
ラムは元軍医であり、写真に写っている少年兵は、ラムの患者でした。
このときラムと少年兵の間には、少なからず信頼関係があったと思われます。
結局ラムは助からない少年兵を射殺し、自身も精神的に壊れてしまいました。
逆に言えば少年を殺して、自分の精神的が壊れるほど、少年兵たちに対して熱い情熱を持って接していたということです。
患者から見たとき、情熱を持って接してくれる医者に信頼感を抱かないわけがありません。
やはり、少年兵とラムには信頼関係があったと思われます。