息子とのテンポのいい対話シーンもあって、思わず楽しく話してしまいそうな人柄も伝わってきます。
こうした彼の持ち前の性格が、成功に大いに役立っていることもここでわかるのです。
夢に向かって進む意志
また、タクシーで咄嗟にクリスが言ったセリフで注目したいものがあります。
「できます」
「ムリだ 誰にもできん」
「いや できますよ」引用:幸せのちから/配給会社:コロンビア映画
かなりの負けん気を持っていることがわかる受け答えですが、これは中盤で息子に語るセリフとも対応しているのです。
「誰にも ムリだなんて言わせるなよ
夢があったら それを守るんだ」引用:幸せのちから/配給会社:コロンビア映画
夢をかなえるため、決してあきらめないという強い意志が窺えます。
将来を決めるかもしれない場面でも、彼が恐れずに大胆な行動を取れる理由です。
タクシーでの一幕は、クリスの負けん気の強さもよく表しているシーンだといえるでしょう。
クリスの中心にある存在
ではその意志や行動力がどこから生まれたのか、ということも気になる点です。
生来的な性格はもちろんですが、やはり息子の存在が大きかったことでしょう。
例えばこの後、養成コースの研修中には時間を切り上げながらトップの成績を獲得、時には車に撥ねられても保育所へ迎えに行きます。
それらすべて、クリストファーのためを考えたからこそできた行動でした。
面接に漕ぎつくにも、ただ待っているだけでは駄目だと理解したのでしょう。
待ち伏せしてタクシーに乗り合わせるほどの貪欲さは、ここから生まれたのです。
彼の考えや行動の中心には常に息子の存在があり、その為にならとてつもない“ちから”を発揮できるのです。
ルービックキューブの成功は、クリスの人間性と、息子への思いの強さの双方を明確に示していたといえるでしょう。
トイレで眠る経験 絶望的な状況からクリスが得たものは
しかしそんなクリスにも困難が次々と訪れます。
衝撃的なのは、駅のトイレで寝泊まりするまでに至ったシーン。この印象的な場面を考察します。
全てを失うということ
彼は父親のいない不幸を、息子には与えるまいと決意していました。
しかし現実には住むところさえ失い、ホームレス生活を余儀なくされます。親としてのプライドも粉々になったはずです。
ただ、保育所から息子を無理やり引き取ったのもクリス本人。
そこには強い責任感もあったとはいえ、彼が引き取ったせいで子供にこんな経験をさせてしまったという事実があります。
もしかすると、自身の辛い子供時代を思い出していたのかもしれません。