スピリチュアルの観点によると、生物が生まれ変わる際には魂を成長させるために、前世の記憶を消されるといわれています。
この考え方に基づくと、雲の国・天国などといった死者がいる世界から生者がいる現世にスアが戻ってくる際にも記憶が消されるのではないでしょうか。
そして少しずつ妻・母親としての思いに気付いていく過程を描くことで、物語のラストで描かれている家族の成長や、より深まった家族愛に繋がるのでしょう。
ペンギンの絵本に基づいている
絵本では、雲の国にいる母ペンギンは列車に乗って地上の世界に戻ってきます。
実は、母ペンギンが列車の窓から外の様子を見ている時に、首に巻いているマフラーが風で飛ばされるシーンがあるのです。
マフラーは赤ちゃんとの思い出という解釈もでき、風で飛ばされることが現世に戻ってくる時にはそれまでの思い出が消えることを表すと考えられます。
ペンギンの絵本は、ジホが読むことを考えてスアが作ったものであると物語の冒頭で描かれています。
そのため「たとえ再会しても母親の記憶が消えているという内容を直接書いてしまっては、ジホが本を読んでいる時に悲しんでしまうことでしょう。
そこで、マフラーという小道具が風に飛ばされることによって、再会時のスアが記憶喪失になることを表しているのではないでしょうか。
スアの日記と絵本が意味するものとは?
物語におけるキーアイテムともいえるのが、スアの日記と絵本です。
トンネルで出会った女性やウジン・ジホの行動に影響を与えているアイテムですが、これらのアイテムにはどんな意味が隠されているのでしょうか?
日記はスア自身の人生観
スアの日記は、物語中盤にウジンやジホと一緒に再び家族として暮らしはじめたスアが自宅で発見したものです。
そして物語の最後にて、ウジンへの思いや自身の未来について記録したものであることが判明します。
冒頭で語られた夫婦のなれ初めはウジンの目線で描かれていますが、こちらではスアの目線で語られており、冒頭の回想の穴埋めをする役割を担っています。
ウジンへの言葉や、自身の体験ついても書かれていることから、日記はスアの思いを整理したものであるとともに、スアの人生観そのものと考えられます。
絵本は息子へのメッセージ
物語に登場する絵本は、スアが手作りしてジホに贈ったものであることが劇中で描かれています。
可愛らしいペンギンの親子の再会と別れを描いた内容は、劇中で描かれるスアとジホの再会と別れをそのまま反映したものといえるでしょう。
再会と別れを優しいタッチの絵とストーリーで表現しているのは、幼いジホがスアの死をより分かりやすいようにしているからといえます。
病気で死んでしまうスアが、ジホへ遺した「死んでしまってもまた会える」「ずっと見守っている」というメッセージが含まれているといえましょう。
限りある時間のなかで深まる愛
「Be With You~いま、会いにゆきます~」は、奇跡的な再会を果した夫婦の愛に加え、母の死を乗り越えた家族の成長も描かれていると考えられます。