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1作目に引き続き、スマホを中心にさまざまな事件が巻き起こる2作目。
前作の犯人「浦野」を中心に謎を解いていく本作では、前作よりもさらに多くの容疑者が登場し複雑なストーリーが展開します。
恋人同士である加賀谷と美乃里の恋愛事情も事件進展にかかわる大きな要素の1つです。
二転三転するストーリーの中から、加賀谷が最後に美乃里にキスをした理由や、なぜ浦野は加賀谷を指名したのかを考察していきましょう。
加賀谷が美乃里にキスをした理由
海岸にて美乃里は加賀谷にキスをねだりますが、加賀谷は人目を気にして拒みます。
しかし、ラストシーンでは公衆の目を意識しながらも美乃里にキスを贈ります。
加賀谷は気持ちは、事件を通して恋人に対してどのように変化していったのでしょうか。
美乃里を監視していた兵頭の存在
最初のキスを拒んだ2人を、特殊捜査官の兵頭は監視していました。
人目を意識して避けただけのキスではあったものの、この行動が後に美乃里に対する兵頭の疑惑を深めていきます。
上手くいっていない関係性が見えることから、美乃里が加賀谷の立場を利用しようと近づいたと兵頭が考えてしまってもおかしくありません。
そのため、美乃里のスマホがハッキングされたり、SNSのパスワードが盗まれた問題もここでの2人の行為が起因していると考えられます。
愛情の再確認
人目を意識しながらもキスをするラストシーンでは、事件を通して二人の関係や愛の形が変化したことが分かります。
恥ずかしいからと拒んでいた公衆でのキスも、彼女が望むならと自然にできるようになりました。
刑事という立場の加賀谷にとって、公共の場でのキスは公然猥褻になることも考えられます。
しかし、事件を通して加賀谷の美乃里に対する愛情はより深いものとなりました。
美乃里を事件に深く関わらせたことなども相まって、あえて屋外でのラブシーンで愛情を再確認し合ったともいえるでしょう。
ともあれ、キスは言葉では伝えきれない愛情表現の1つです。
心からの信愛と愛情の高まりによるキスが、「スマホを落としてよかった」という回想シーンにも繋がるのです。
ささやかな独占欲
公衆の目を意識しながらお互いにキスを求めることは、独占欲の表れともいえます。
あえて周囲に見せつけて自分のパートナーを認識させれば、自己顕示欲も満たされると考えられます。
最初は美乃里からの一方的だったキスへの欲求も、ラストシーンでは自然にお互いに求めあう形へと変化します。
これは愛情を伝えると共に、加賀谷が美乃里を「自分のものだ」と認識するための行為でもあったのではないでしょうか。
加賀谷の母という存在
加賀谷は虐待ともいえる母親からのネグレクトにより、心にトラウマを抱えていました。
このトラウマに関しては浦野を捕らえた1作目から入っていたエピソードでした。
本作では浦野と加賀谷の関係性を繋げる重要なポイントの1つになっています。
母親の愛情を正しく与えられなかった子供時代は、加賀谷の女性に対しての接し方にも影響を及ぼします。
恋人から妻、母親へと立場を変える女性に抵抗を感じる気持ちが2人の関係性の変化や愛情にストップをかける理由にもなっているのです。
ネグレクトな母親
加賀谷の母親は、子どもを不要なものとして扱うネグレクトな親でした。
その母の存在が家庭という存在の根底にある加賀谷は、美乃里を愛していても変化する関係に歯止めをかけているのかもしれません。
女性や仕事への誠実さは、裏を返せば過去のトラウマを真面目さでごまかしているのです。
「お前なんか生まなきゃよかった!」と言われた子どもは、愛情に対して臆病になってしまいます。
それゆえ、自分が美乃里を愛しているという感情よりも、美乃里に否定されたときの恐怖を想定して行動に踏み出せない部分があったのでしょう。