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『インクレディブル・ファミリー』は2018年公開、ピクサー・アニメーション・スタジオ制作の映画です。
2004年公開の『Mr.インクレディブル』の続編であり、公開までに14年もの月日を要したことでも話題になりました。
前作ではヒーロー活動と庶民生活の葛藤ドラマが描かれています。
Mr.インクレディブルことボブを始めとした誰もがスーパーヒーローであるパー一家は強敵を倒したことで自信を取り戻し家族の絆を深めました。
そして今作の主役は打って変わって母親のイラスティガールことヘレンです。
ここからは彼女の活躍の理由や14年の歳月がもたらした作風の変化について考察していきたいと思います。
イラスティガール活躍の元になった時代背景
子供も楽しめるヒーロー映画でもその多くにはリアルな時代背景が絡んでいます。イラスティガールの活躍を引いた視点から見てゆきましょう。
ポスト9.11時代に劇的に変わったヒーローの役割
前作『Mr.インクレディブル』は2001年のNYでの9.11テロの3年後に公開されました。
そのためか全体的にテロとの戦いに挑む米軍のような力強さばかりが目立ちます。しかしイラク戦争によってアメリカは国際的な批判を受けます。
そこで悪を力づくで叩きのめすだけのヒーローに疑問が投げかけられるようになったのです。
それに伴い映画でもバットマンのように悩み苦しむこともある等身大のスーパーヒーローに人気が集まるようになりました。
この『インクレディブル・ファミリー』でも、その変化がよく見て取れます。
ボブを始めとしたパー家の面々はスーパーヒーローながら誰もが人間味あふれるキャラなのです。
今回主役になったイラスティガールにもジェンダーから自由な現代の女性像が色濃く反映されています。
女性ヒーローの歴史的な変化
従来のヒーロー映画において女性ヒーローは「紅一点」や「男性ヒーローの補佐役」として描かれる向きがありました。
日本の仮面ライダーなどは未だにこの点に留まっているといえるでしょう。女性ヒーローが活躍しても最後に締めるのは男性ヒーローなのです。
アメリカでは「キャプテン・マーベル」や「ワンダー・ウーマン」等女性がメインヒーローとして活躍している映画が続々と登場してゆきます。
この『インクレディブル・ファミリー』のイラスティガールはその一歩先をゆくものでしょう。
彼女は何といっても家族の支えによってヒーロー活動と家庭を両立しているのです。
そんなヒーローはおそらく史上初なのではないでしょうか。『インクレディブル・ファミリー』の最もユニークな点はまさにここにあるでしょう。
イラスティガール活躍の意味するものは
イラスティガールことヘレンは、そのゴムのように体が伸びる特殊能力と同じく心持ちも柔軟です。
彼女は大手通信会社のCEOウィンストンからヒーローを世に広める広告ヒーローとして大抜擢されました。
が、それでも3児の母であることを忘れません。一大任務の真っ最中にも小さな息子からかかってきた電話に丁寧に応じたりします。
これには仕事と家庭の両立に励む多くの世の女性が「あるある」と共感したことでしょう。
ヒーローがもてはやされた頃の古き良き思い出に囚われた夫ボブに対しても新たな時代に順応するよう説得します。
町でのバトルの際にも怪我人が出ないよう出来るだけ被害を出さないように立ち回っていました。