こういったイラスティガール活躍の根本には、女性らしい人への寄り添いが感じられます。
今はアメリカを始めとして世界中で保守層とリベラル層の分断が叫ばれている時代です。
そんな中、彼女がこの映画で見せた心配りはどんなヒーローの特殊能力よりも今必要とされているスーパーパワーではないでしょうか。
ウーマンリブの先をゆく21世紀の女性像
イラスティガールことヘレンはイヴリンとの対比によって21世紀の新たな女性像を提示したのではないでしょうか
ウーマンリブ的女性を象徴するイヴリン
ウィンストンの妹・イヴリンは発明家であり通信会社の中で画期的な技術を生み出しています。
いわゆるバリキャリ女であり、CEOの兄が自分の下にいるような発言もします。しかしヘレンはそんな彼女に魅了されたことで罠に陥ります。
イヴリンは人々の自立を阻害するという理由でスーパーヒーローの撲滅をもくろんでいたのです。
その姿には過剰に男社会からの独立を叫んでいたウーマンリブ時代の女性が重なります。
アメリカではイヴリンのモデルがヒラリー・クリントンではないかという笑い話も出たようです。
ヒラリーもまたイヴリンのように過度に女性の強さを押し出すタイプでした。一方のヘレンは家族や社会との調和の中で自由を目指すタイプです。
ヘレンのこの精神的な柔軟さはイラスティガールの柔軟さよりも増して世の女性に訴えるものがあったのではないでしょうか。
ヘレンからバトンを受け取ったヴォイド
イラスティガールとしての活動をする中で、ヘレンは色々な立場の女性に出会います。
家庭との両立を考えながら本心に従って働けている彼女はさながらヒーロー界のワーキングマザーでした。
ヴォイドという若い女性も彼女に会った際、元気をもらってヒーローとして活動するようになったと感謝の気持ちを伝えます。
イラスティガールはすでにヒーロー界の新たな女性像を打ちたて、若い女性ヒーローたちの模範になっていたのです。
ここにも世の多くの女性が共感させられたでしょう。多くの職場には理想となるワーキングマザーが1人くらいはいるものです。
若いヴォイドはヘレンの存在を際立たせ、さらに新たな時代の女性像へのバトンタッチを印象付けもしました。
14年の歳月がもたらした作風の変化
『Mr.インクレディブル』の1と2の間では14年もの月日がたっています。
物語上は3ヶ月たっただけですが、このリアルな長い歳月は作風にも影響を及ぼしています。
14年を経て1セットになった2作
物語の主軸として前作は父親のボブの人生が描かれており、父親としての葛藤や世間に受け入れてもらえない悲しみが描かれていました。
今回もベースとなる流れは前作と似てはいるものの、主軸が母であるイラスティガールにかわり前作と対をなす形となっています。
この男女平等に主役が割り振られている点に時代の流れが感じられます。
そしてストーリーのつながりからも、この2作は14年の歳月を経て1つになった作品になったといえます。
スーパーベイビー!ジャック=ジャックの大活躍
目に見える形での今回と前回の最たる違いはパー一家の赤ちゃんジャック=ジャックの成長にあるのではないでしょうか。
今作ではこのヨチヨチ歩きの赤ちゃんが17個ものスーパーパワーを発揮したのです。実際、今回の主役ではないかというほどの活躍ぶりでした。
ジャック=ジャックとアライグマの戦いはおそらくこの映画で最も人気を集めたシーンでしょう。ベストファイトだという声もあがるほどです。
単に非力な赤ちゃんと超能力のギャップを狙っての演出だとも見れます。
日本の漫画でも『天才バカボン』のハジメちゃんや『うる星やつら』のテンちゃんがそれに当たるでしょう。