己の力を使えば都などどうにでもなるという思いが抑えきれなくなったのでしょう。
初めは右大臣の邪心に取り入り操ろうとしていましたが、晴明により計画が頓挫したために最終手段に打って出ます。
前述しましたが青音はこの時を待っていたというよりむしろ操っていたのかもしれません。
道尊と蘆屋道満
道尊は映画だけのキャラクターです。
小説には晴明の味方とも敵ともつかない陰陽師として登場する蘆屋道満がいますが、明らかに道満ではありません。
共通点は『晴明の実力を認めている』ことです。
道尊も道満も自身の野望の実現のために晴明と対決しますが、心の底で殺すには惜しい男と思っています。
晴明は博雅が頼むから戦っているので殺すことが目的ではありません。
どちらも味のあるキャラクターで悪役ながら安倍晴明に次ぐ人気を誇っています。
晴明を救った密虫の正体は
映画では今井絵理子が演じた密虫は晴明を助ける役割を担っていました。
自分の意志を持っているような密虫の正体は何でしょうか。
密虫の正体
密虫は式神の一種で晴明の密虫は『蝶』の精霊です。
晴明は現存する文献にもあるように『式神』を操る術に長けていました。
貴族の気まぐれで殺すよう命じられた蝶を懐紙に包んで懐に入れ持ち帰り、式神として使役していたと思われます。
蝶の密虫は『蝶』という生命体の精霊ですので、紙の式神とは違い意志を持っているのです。
ですから晴明が結界を張るために道尊に背中を見せた時、密虫は命を捨てて守るという選択をしました。
その後のシーンで死んだはずの密虫が生き返っています。
それは自害すると決めた道尊が泰山府君の術を使い命を入れ替えたのでしょう。
ちなみに道尊の密虫は『鳥』でした。
式神とは
式神とは陰陽師が使う技の一種で、それほど高等ではない神やもののけを呼び出し、紙で作った人型に憑依させて使役したものを言います。
人型に切れば人になり動物型に切ればその動物となって仕えますが、命のあるものを式神にするには相当な霊力が必要だったとされています。
安倍晴明は式神使いの達人と言い伝えられていますので、その実力たるや推して知るべしですね。
テレビドラマとの違い
キャストの違い
映画『陰陽師』の主演は狂言師である野村萬斎が務めます。
さすがに幼少のころから培った無駄のない優美な動きは目を見張るほどの美しさです。
萬斎の晴明は理想的だといわれるのも頷けます。
かたやドラマ版の安倍晴明は佐々木蔵之介で高い演技力を遺憾なく発揮しています。
安倍晴明ゆかりの地である京都出身だけあって違和感が全くありません。
相棒の源博雅は映画版が伊藤英明、ドラマ版は市原隼人です。
映画版のキャストも豪華でしたがドラマ版も素晴らしい演技派俳優が揃いました。
シリーズ最強の敵である平将門に菅田俊、敵とも味方ともわからない蘆屋道満に竹中直人を配し、如月には剛力彩芽です。
ちなみに他にも晴明役で稲垣吾郎が出演するドラマシリーズもあります。
ストーリーの違い
映画『陰陽師』とドラマスペシャル『陰陽師』は採用した原作が違いますのでストーリーもかぶるところはありません。
映画は原作小説の『鉄輪の章』を柱に構成されていますが、映画ならではのキャストも多く独自性の高いストーリーです。
ドラマスペシャルの方は『夜叉姫の章』を題材に製作されており、かなり原作に近い内容に仕上げられています。
続編の映画『陰陽師Ⅱ』は2003年に公開されました。