キャピーが昏睡から目覚めてでも動いた真意、それはテロリストが待ってくれないからです。
普通の映画であれば体調が回復し万全になってからとする所ですが、本作のテロは一刻を争います。
そこで回復を待ってなどと悠長なことはできない、時間のみが過ぎていく中で勝負しないといけません。
この万全な体制じゃない中で戦わなければならないリアルさが本作の緊張感へと繋がっているのです。
これは現実のビジネスも同じで、1日24時間365日という限られた時間を工面しないといけません。
綺麗事の覚悟ではなく、追い詰められた極限状態の覚悟がキャピーの覚悟の中身なのです。
ケイヒルの助力
そしてもう一つ、満身創痍だった筈のキャピーを支えてくれたのはケイヒルでした。
ケイヒルが力を貸してくれたからこそキャピーも一人では辛い状況を何とか出来たのです。
上述のグラントとジーンもそうですが、本作のメンバー達は得意分野はあるものの完璧ではありません。
個の力だけが強くても勝てない状況をプロや素人の枠を超え協力して乗り越える所にドラマが生まれます。
もしここで一人でもスタンドプレーを優先していたらテロリスト達に屈する以外なかったでしょう。
それ位危険な状況の中で戦っていたことになります。
上意下達方式の限界
本作ではもう一つ、政府が判断ミスで特殊部隊が全滅したと勝手に思い込み航空機を爆破しようとしました。
この辺りで上意下達方式の限界が示されており、現場のことは実際に現場に出向かないと分かりません。
今回選ばれた特殊部隊からして想定外の中で戦わないといけない状態であり、戦士として最適かは疑問です。
極限状態のハイジャックの中で戦いの行く末に待ち受ける結果が見えない状態で戦わないといけません。
つまりそれは上からの権威に縋ることなく一人一人の決断に基づく正義で戦う時代の到来を意味します。
日常から忍び寄る悪の前ではもはや大きな組織のバックアップなどかえって邪魔になるだけです。
そのようなシビアな戦いを非常に細かいリアリティをもって描ききってみせました。
常識破りの決断
本作のタイトルは”最終決断”と訳されているようですが、これではやや正確さに欠けます。
ここまでの考察を元にすると“常識破りの決断”というのが本作におけるタイトルの意味でしょうか。
未曾有のテロリズムを前に既存の戦い方ではどうにもならないのが本作の政治的ハイジャックでした。
そこで必要になるのは状況に即したより実戦的かつ現実的な、しかし同時に常識を覆す決断です。
グラント達は自分達の力だけじゃなく、思わぬ人達からの助力を借りてこのテロを防ぎました。
素人とプロという括りは何の意味も成さなくなり、個人の決断で立ち向かうしかありません。