レイチェルは何とエレノアに8牌を渡すという不可解な選択を取ってしまうのです。
この8という数字はアジア圏では「幸福」「末広がり」の意味を持つ大変貴重な数字となります。
それを彼女は敢えて手放したのですから、いってみれば「花を持たせる」ことを意味するのです。
そしてレイチェルにとってはこの8牌は即ち彼女自身の幸せの象徴であるニックそのもの。
それを手放してエレノアに渡すということはもう答えは一つしかありません。
ニックの幸せを願う
つまりこの麻雀はレイチェルが決して不純な動機でニックの恋人になったわけじゃないという証明です。
自分の幸せではなく、あくまでニックの幸せを願いエレノアを立てたことを意味します。
そしてそこで彼女は最後に次のような捨て台詞を吐くのです。
あなたが将来月下美人の咲くころに小鳥が鳴き、孫と遊ぶ時か来たら思い出してください。
私のおかげです、名もない移民のおかげだと引用:クレイジー・リッチ!/配給会社:WARNER BROS.
ここですかさず「私のおかげ」と言ってみせるところにレイチェルの自己主張も織り交ぜられていますね。
なのでただの自己犠牲ではなく、差別や血筋・人種などに屈さないという意思表示なのです。
レイチェルはエレノアとの勝ち負けではなくもっと奥深くにある人種の壁という大きな問題と戦いました。
だから彼女は形の上では「負け」でも心の問題においては「勝ち」を収めたことを意味します。
それ程の深い意味がこの麻雀シーンには込められているのです。
ニックが渡した結婚指輪
上記の麻雀のシーンを受け、ニックはラストでレイチェルに婚約指輪を渡してプロポーズします。
その結婚指輪は彼自身が買ったものではなくエレノアが指につけていたものでした。
ここから結婚指輪の意味を読み解いていきましょう。
エレノアがレイチェルを認めた
あれだけ頑なにニックとの結婚を拒んだエレノアがレイチェルを認めたことを意味します。
レイチェルが決してただの金目当てでやって来た人ではないことを麻雀から知ったのです。
しかも彼女はニックに家族を捨てさせる選択をさせてはならないとまで断言しています。
ここまでレイチェルにいわれればさしものエレノアも認めざるを得ないでしょう。
だからこそレイチェルはニックのプロポーズを快諾したのです。
本物の指輪
しかもラストで出てくるエメラルドの指輪は決して映画用の小道具ではありません。
何とエレノア役のミシェル・ヨーの私物たる本物の指輪であり、資産価値が物凄く高いのです。
なのでレイチェルがそれを結婚指輪で受け取ることは奇跡のシーンにもなっています。
ミシェル・ヨーというと肉体派のアクション女優で有名ですが、夫は凄まじいお金持ちです。
正に中の人がリアルにクレイジー・リッチであり、その象徴がこのラストには詰まっています。
ニックの甘さ
同時にこのシーンはニックが自分自身の甘さを反省し立ち直ることを意味するシーンでもあります。
ニックは決して母にベッタリではなく反発するときは反発するし、家族を捨てて駆け落ちまで考える人間です。
自立心は十分に育っていますが、一端レイチェルが絡むと向こう見ずになってしまう甘さもあります。
彼が家族を捨ててしまうことは同時に彼自身の強さを形成してるものを全て失うことをも意味するわけです。
全てを捨てた上での強さもありますが、ニックの強さはお金持ちの御曹司という生まれ育ちに根拠があります。