逆にいうとそういうことをしないといけない程チャーリーの精神は限界まで追い込まれていたのでしょう。
キスで崩れる仲間の関係性
孤独だった壁の花チャーリーの高校生活もサムと義理の兄パトリックとの出会いで大きく変わります。
友達や仲間も増えますが、同時に全く好意を寄せていないメアリーからも好かれることになるのです。
しかし、サムに好意を寄せるチャーリーはあるゲームでサムにキスし、メアリーから振られてしまいます。
キスで簡単に崩れてしまう仲間の関係性とはどのようなものなのでしょうか?
不義理を働いた
まず最初に気をつけるべき点としてサム自身にもメアリーに不義理を働いたことが挙げられます。
チャーリーはサムのことが好きという気持ちがあるのだから、メアリーに告白された時に断るべきでした。
そこを有耶無耶にし、好きでもないのに受け入れた挙句にトドメとしてサムにキスをしたのです。
メアリーのみならず他の友達からしても他の女に浮気した最低野郎と罵られても仕方ないでしょう。
それだけ悪いことをサムはしでかしてしまったのですから。
村八分
そしてもう一つ、キスと関連するのがパトリックの抱えていたブラッドへの同性愛でした。
アメリカではこのゲイも含んだLGBTへの差別と偏見が未だに解消されませんが、これでまた関係が崩れます。
サムとメアリーのキスといい、高校のスクールカーストにおいて特に恋愛や性が絡む話題はデリケートです。
好きでもない女を撥ね付ければハブられ、同性愛というだけで謂れ無き差別を受けることになります。
つまり、スクールカーストとは異分子を排除しようとする村八分だという本質を描いているのです。
多数派民意の残酷さ
そうした村八分の仲間の関係性の本質、それは多数派民意の残酷さではないでしょうか。
これはスクールカーストのみならず民主主義社会や大衆という存在が本質的に持つ恐ろしさなのです。
世の中は国・社会が作る「常識」「普通」という尺度があって、そこから外れると少数派として爪弾きにされます。
そしてその先に待ち受けているのは常識、普通という尺度を持つ民意によって織りなされるいじめ・淘汰です。
またそれはチャーリーやパトリックが最初から少数派として生きざるを得ないという現実をも示しています。
表に立つ過激な指導者よりも数の暴力とでもいうべき多数派の民意こそ一番の敵かも知れないのです。
キスで崩れる仲間の関係性、その本質は平和の皮を被った人間の残酷さではないでしょうか。
3人が語り合う未来
苦しみに苦しみ抜いたチャーリーは最後の最後でパトリックとサムに受け入れられます。
チャーリーはこの時初めてウォールフラワーであることの特典を報償として受け取りました。
車の中で3人が語り合う未来、そこには果たしてどのような真意があるのでしょうか?
自分自身の解放
一番大きいのは3人とも自分自身を人に愛されるために隠さなくて良くなったことでしょうか。
チャーリーとパトリック、二人のよき理解者であったサムも結局周囲の期待する「良い子」を演じていたのです。
サムもまた彼氏に浮気され、チャーリーに受け止めて貰った時初めて自分の本心と彼の魅力に気付きました。