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『サヨナライツカ』は辻仁成の小説を中山美穂の主演で映画化した恋愛物語です。
監督はイ・ジェハン、中山美穂の相手役は西島秀俊で彼の婚約者として石田ゆり子が参加しています。
タイバンコクの美しい風景がまるでそこを訪れているかのような気持ちにしてくれる映画です。
気持ちを隠し関係を解消したはずの真中沓子はなぜオリエンタルホテルの従業員になったのでしょうか。
再び沓子に会いに行く夫を咎めもせず詩集を渡し送り出した光子の心境と、死を迎えた沓子の心を徹底考察していきましょう。
25年後の沓子はなぜホテルの従業員になっていたのか
豊と別れニューヨークに旅立ったはずの沓子は25年の時を経て思い出のホテルで従業員として働いていました。
彼女はなぜそのホテルで働いていたのでしょうか。
沓子がホテルで働いていた理由
沓子がホテルで働いていた理由は豊を待つためです。
ただ待つだけでなく従業員にならなくてはいけない理由があります。
それは『豊がいつ来てもわかるように』するためです。
豊が自分を思っているならオリエンタルホテルを使うと考えたのでしょう。
宿泊予約情報を入手したいなら従業員になるしか方法はありません。
事前に情報があれば万全の準備で豊を迎えることができます。
25年間待ち続けた沓子の心境
原作では触れられていますが映画では描かれていない沓子の25年は幸せなものではありません。
豊を忘れるため無駄な買い物での散財や何人かの男性との関係でそれがわかります。
しかし何をやっても豊を忘れることができないと悟った沓子は自分の心に正直になろうとしたのです。
そしてバンコクに戻りました。
バンコクは豊かな自然に囲まれ仏教が身近にある都市であり、何より豊と過ごした場所です。
豊を失いぽっかりと開いた穴を埋めないまま暮らす決意をした沓子にとってバンコク以外は考えられません。
沓子は何度も豊と歩いた道を1人で訪ねています。
沓子の時間は『ウッタヤーン・ガーンジャナー公園の橋の上』で止まったままです。
そして25年後に再会した豊と一緒に行ったのもここでした。
ここはかつて酷い言葉で豊に別れを切り出させた場所です。
沓子がここに来たがった理由はあの時の豊の言葉が嘘だと知っていたからでしょう。
その嘘をつく前に戻りたかったのです。
東垣内豊はなぜ沓子を捨てたのか
東垣内豊は自分の心に嘘をつき周りの期待に応える道を選択します。
当時の彼は何もかもを捨てる勇気が持てませんでした。
そして何よりそうすることが『人として正しい道』だと思っています。
若かりし東垣内の心理
彼は出世というより、人の後塵を拝することに我慢ができない性格です。
本当に出世を目指している人なら野球の試合で上司のサインを無視するようなことはしません。