そんな光子の『平穏な孤独』を表しているのが『サヨナライツカ』なのです。
詩集に挟まれていたポラロイドを見た豊は何を感じたか
あの日なぜ急に沓子が別れるといったのかが一瞬で理解できたことでしょう。
自分で選んだ気になっていた沓子との別れは光子が仕組んだものだったのです。
強い女の沓子と弱い女の光子。
実は逆だったことが観る者にも伝わったシーンです。
沓子は死ぬ時どちらを思い出したのか
ネタバレになりますが鏡の前でウィッグを着けるシーンがあるので沓子はガンです。
そのあとすぐにウェディングシーンがありました。
そこに『愛されたこと』を思ったのか『愛したこと』を思ったのかのヒントが隠れています。
沓子はどちらを思ったか
沓子は『愛されたこと』を思いながら亡くなります。
彼女にとってのウェディングドレスは愛の象徴でした。
あの頃の愛された思い出の集大成があのシーンを生み出しました。
沓子はずっと自分は愛したけれど愛されてはいなかったと思っています。
しかし豊と再会したことで『私はずっと愛されていた』と思いながら息を引き取ったのです。
豊は死ぬ前何を思うのか
豊は沓子に再会して『愛している』と言いました。
一方で光子にもその言葉は言っています。
しかし豊が愛するよりももっと強大な愛を2人の女性から捧げられていました。
沓子が亡くなり豊は若いころと同じ選択をします。
能動的な愛より受動する愛に落ち着いたのです。
きっと彼は死の床で『いろいろな人がくれた愛』を思うのではないでしょうか。
光子は死ぬ前にどちらを思うのか
光子の人生は愛を与え続けることで成り立っています。
その対象は家族ですが夫も息子も光子の愛に応えてはいません。
彼女はただひたすら愛を与え続け、死ぬ間際も『どんなに愛していたか』を思い返すことでしょう。
オリエンタルホテルとメルセデスベンツの役割
世界有数のラグジュアリーホテルとして名高いオリエンタルホテルが舞台として選ばれました。
また素敵な高級車も登場します。
なぜそのようなハイソサエティな設定が必要だったのでしょうか。
オリエンタルホテルの「サマセット・モーム・スイート」である必要性
沓子が住んでいた「サマセット・モーム・スイート」は実在する部屋で、高級ホテルオリエンタルの中でもハイクラスのお部屋です。
この部屋の最低宿泊料は一泊約30万円といわれています。
そんな部屋を無造作に散らかし、まるで楽しんでいないような使い方をしていました。
このことでどんなにお金があっても心は満たされないことを表現しているのです。
なぜメルセデスベンツを使用したのか
メルセデスベンツ500Kロードスター1934年式は豊の成功の象徴です。
かつて沓子が買ったこの高級車を即断で購入する地位を手に入れていることを表しています。
しかし彼がこの車を手に入れた時には助手席に乗ってくれる人はいません。
人の幸せはお金でも成功でもないということを感じさせるためにこの2つの設定が不可欠だったのでしょう。