出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B00HY0CGSS/?tag=cinema-notes-22
映画「スケート・キッチン」(c)2017 Skate Girl Film LLCは「Miu Miu Women’sTales」の一環で製作されました。
クリスタル・モーゼル監督が手がけた短編「That One Day」を基にして作られています。
主演にはレイチェル・ヴィンベルク、そして助演にジェイデン・スミスという実力派でしっかり固められています。
ニューヨーク郊外を舞台に実在のスケートボーダーの女の子たちの日常の悲喜交々を巡る様々な葛藤を描いた青春映画です。
今回はその中でも主人公カミーユの母が家出を怒らなかった理由を中心に考察していきましょう。
また、カミーユと仲間達が仲直り出来たきっかけや彼女の大切な人に対する後悔の真意も掘り下げていきます。
“セックス”と”ジェンダー”を巡る物語
本作全体を構成しているのはいわゆる”性”、もっと詳しくいうと“セックス”と”ジェンダー”の違いです。
主人公カミーユは「女の子だから」という生物学的性を理由に母からスケボー活動を禁止されてしまいます。
そこで彼女が出会ったガールズスケートクルー「スケート・キッチン」は彼女にとっての生き甲斐でした。
しかしスケートボードにおいても“生物学的性(セックス)”と”社会学的性(ジェンダー)”の壁に苦しみます。
これは内気な女の子がスケート活動を通してそうした「性の壁」と葛藤し、乗り越えていく物語です。
それをドキュメンタリー感覚でわざとらしくなく淡々と演出しているのもまた独特の作風に繋がっています。
母が家出を怒らなかった理由
カミーユは長い間母とずっとスケートボードを巡って対立し、遂には家出までしてしまう程でした。
しかしそんなカミーユがラストで一度傷つき母の元に帰った時何もいわず温かく受け入れたのです。
果たしてそこにはどのような理由があったのでしょうか?
押さえつけないことの大切さ
母の心境の変化の過程自体は描かれていませんが、一つ大きな変化が見られます。
それは母がカミーユのやりたがっていたスケートボードの活動へ理解を示していたということです。
母は頭ごなしに上から押さえつける教育がかえって娘に家出を決意させた自覚があったのでしょう。
思春期という一番多感な年頃の娘に母としてしてあげられることは果たして何なのか?
それが押さえつけることではなく自由にさせてあげることだったのかもしれません。
“帰る場所”=キッチン
そしてまた、カミーユの母は本作におけるキッチン=”帰る場所”の象徴でもあります。
母親の一番大切な役割は子供達がいつでも帰ってこられる温かい場所を作ってあげることです。
それこそがまさにキッチンであり、カミーユがいつでも帰ってこられる場所になっています。
真の母となり、大きな余裕が出来たことで娘の帰りも静かに待てるようになったのでしょう。
一念岩をも通す
カミーユのスケートキッチンに対する一途さを聞いて母は漸く娘の事情を理解し受け入れました。