出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B083318PQ7/?tag=cinema-notes-22
本作は「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM 2016にて審査員特別賞を受賞した企画を映画化した作品です。
監督はCMディレクターの箱田優子、更に夏帆にシム・ウンギョンというこれまた異色のキャストになっています。
特にシム・ウンギョンは「新聞記者」での主演をきっかけに日本で活躍の場を広げていることでも有名です。
やや特殊な立ち位置と作品情報を持つこの映画はその独特のタッチが評価され、以下の賞を受賞しました。
第22回 上海国際映画祭アジア新人部門 最優秀監督賞(箱田優子)
第34回 高崎映画祭 最優秀主演女優賞(夏帆)
第34回 高崎映画祭 最優秀主演女優賞(シム・ウンギョン)引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/ブルーアワーにぶっ飛ばす
内容は箱田監督の自伝といってもいい、ある自称売れっ子CMディレクター砂田の実態を生々しく描いています。
彼女が突然大嫌いな故郷へ天真爛漫な友達キヨと帰省をした時、果たしてそこで何が起こるのでしょうか?
一夏の不思議な物語を描いた本作のラストでキヨこと清浦が消えた理由をネタバレ込みで考察していきます。
また、衰弱する祖母が与えた影響や砂田がスナックでスマホを床に投げつけた真意も迫っていきましょう。
大人になっても続く”青い鳥”探し
本作独自の特徴は大人になっても続いている“青い鳥”探し、そのくだらなさを砂田を通して描いていることです。
砂田は仲の良い旦那、東京での充実した仕事、そして大人の割り切った関係と大人の自由を謳歌しています。
にも関わらず、全然内奥は満たされず一度口を開けば下品な罵詈雑言の応酬とそれに自己嫌悪を抱える日々。
故に好き嫌いが極端に別れますが、そうした満たされない欲を引きずった大人の話です。
そしてその青い鳥探しが結局はないもの強請りであることに気付く、そういうお話になっています。
清浦が消えた理由
砂田の友達と名乗るキヨこと清浦あさ美は最後東京へ戻る車の中で姿を消します。
それまでずっと一緒だった筈の彼女は何故突然に居なくなっていたのでしょうか?
ストーリーを踏まえながらじっくり考察していきましょう。
潜在意識の具現化
結論からいえば清浦はもう一人の砂田、正確には“砂田の潜在意識”が人の形に具現化したものでしょうか。
清浦の言動・行動は非常に子供じみていながらとても深い所を鋭く突いています。
特に興味深かったのは砂田が田舎が大嫌いだといったときに清浦が「ダサい」と返したことです。
これは東京でバリバリ仕事をこなし一流の大人になっているはずの砂田には痛烈な一言でありましょう。
しかし、清浦の指摘する「ダサい」は砂田が奥底で思っていたことでもあるのです。
本音を隠して大人の仮面をつけて、でもそれで割り切れないで燻っているのですから。
服装に見る砂田と清浦の違い
二人の関係性や性格の違いは服装にも表されており、砂田が青のシャツに清浦が白のシャツです。
大人でありながら”青い鳥”を求めている砂田と子供の純粋さを表わす白の心を持った清浦になります。
そしてまた青い空を必死に求める砂田とただ青い空を素直に受け入れる清浦の違いでもあるのです。
こうした心理効果を服装の違いで表現している所もまたスマートで抜け目がありません。
理想の姿は自分の内にある
こうしてみると、最後の台詞の意味も分かってくるでしょう。
こんにちは、本当の自分。さようなら、なりたかったもう一人の私
映画:ブルーアワーにぶっ飛ばす/配給会社:ビターズ・エンド
そう、実は清浦の飾り気のない天真爛漫で無邪気な姿こそ砂田のなりたかった自分だったのです。
しかもそれは都会の生活の中で求めた青い鳥ではなく、大嫌いだった田舎の原風景の中にありました。