しかし赤ちゃんが生まれ、これからさらに忙しくなるときにウェンディと共に暮らします。
それはなぜかというと、ウェンディが作品を通して成長したのを見て、苦手を克服できるし、できることも多くあることを知ったからです。
自閉症を持つ方の「苦手」な面はサポートしつつ、克服できるものやできることは任せる。
こうすることで、サポート側の負担は減ります。赤ちゃんと触れ合うことができるようになり、赤ちゃんを任せる時間も増えたでしょう。
家でピートを飼うことにもなりましたが、ウェンディが冒険の途中に世話をやり通し続けたので、任せても大丈夫なはず。
この姿勢を持つことで、自閉症を持つ方の自立はサポートできるのです。
助けてくれる人がいなかったら…
ウェンディは道中何度も危険な目に遭っています。しかし、そのたびにウェンディを助けてくれる人たちがいました。
例えばコンビニで助けてくれたおばあさん、バス停の受付、警官…。
作品内でも描写があるように、自閉症を持つ方は、音や光といった刺激に敏感に反応することがあります。
さらに人とのコミュニケーションも含めると、ウェンディに助けがなかったらどうなっていたでしょうか。
だからこそ、サポート役は必要です。そのサポート役が、どんな姿勢で関わるかは先述しています。
これは監督のベン・リューイン自身も歩行が困難で時にはサポートが必要なため、映画全体を通して描き出された描写なのです。
能力の高さの活かし方
自閉症という障がいを抱えているから、健常者と比べると能力的に低いのかというとそうではありません。
逆に健常者と比べると、突出するほどに高い能力を発揮する場面も多くあります。
記憶力の良さ
自閉症を抱える人の中には、車のナンバーや人の誕生日を一度見聞きすれば、二度と忘れない能力を持っている人もいます。
この記憶力の良さを、ウェンディは日課のおさらいで見せつけました。何曜日にどの服を着て、どの道を通ってバイトに行き…。
ウェンディの記憶力はすさまじく、その計画通りの生活を行おうとします(作中で朝のシャワーが浴びられないときにはスルーします)。
自立して生きていくには、仕事が必要です。
この記憶力の良さを生かすことのできる仕事があれば、自閉症の方がお金に困ることはありません。
作業量や集中力の持続
映画内では他にも、自閉症を抱える方の持つ高い能力が示された場面がありました。
それが素早い手作業でする編み物のシーンであり、タイトルの500ページ(作品内では427ページと紹介)脚本を書きあげるシーンです。
自閉症を抱える方の中には、単純作業を長時間、かなりの緻密さと正確さを持って作業し続けられる方がいます。
また、ウェンディは脚本を書きあげますが、427ページもの大作を「完璧な正しい書式」で書くことができました。
健常者と同等、またはそれ以上の能力は仕事においては必ず有利に働きます。自立をする上で、これらの能力をどう生かすのか。
自閉症を抱える方は、大いに社会の役に立つ能力を持っているのです。
障がいを持つ人の居場所は?
映画ラストでは『スタートレック』の登場人物に、オードリーとウェンディ姉妹が重ねられて登場していました。
ウェンディの脚本には、その物語のエピローグとしてこのようなものが付け加えられています。
すべてうまくいくとスコッティは言った。でも宇宙を旅していた光の粒はどこへ?ほかとは異なる光。自分の居場所を見つけられた?
引用:500ページの夢の束/配給会社:マグノリア・ピクチャーズ
このエピローグの後、ウェンディはバイト先の男性にCDを送ったり、その男性や施設長に「ありがとう」と言ったりしています。
これらのことから、ウェンディは自身という「ほかとは異なる光」が「自分の居場所」を見つけたことが分かります。
ラストにオードリーの家に、ピーターが入っていく様子を見ればそれは確実でしょう。