出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B00G182PY4/?tag=cinema-notes-22
本作は伊坂幸太郎の原作小説を映画『アヒルと鴨のコインロッカー』で有名な中村義洋監督が実写映画化した作品です。
キャストは伊藤淳史と高良健吾の二人を中心に多部未華子や濱田岳など豪華絢爛な若手俳優を中心に据えています。
音楽には伊坂幸太郎と親交のあった斉藤和義が抜擢され、かなり本格的に凝った作りとなりました。
構成も特殊で1953年・1975年・1982年・1999年・2009年・2012年という6つの時系列が同時並行で進む仕組みです。
かつラストでその種明かしが行われるというザッピング形式ので、情報量もそれだけ多い作品となっています。
本稿ではその中から1975年のパンクバンド”逆鱗”を中心に、何故世界の危機を救うことが出来たかを見ていきましょう。
また、バンドの思いが誰に届いたのかや無音部分に込められた思いも併せて紐解いていきます。
正義の味方とは何か?
本作において大きなテーマとなっているのは「正義の味方とは何か?」ということです。
日本では分かりやすくウルトラマンや仮面ライダー、スーパー戦隊などの子供向けヒーローがそれに該当するでしょう。
しかし、問題はその「正義」が果たして何をもって「正義」とするのかであり、これは永遠に決着のつかない課題です。
本作で描かれている正義の味方とは決してそのような子供向けの一種ステレオタイプ化されたヒーローではありません。
何故ならば彼らには明確な「悪」との戦いではなくもっと内面的な自分自身との戦いであるからです。
それは昨今絶対的正義がなくなり主観的正義が横行するようになったことと重なります。
本作は主観的正義をもって動いた者達の思いが時代を超えて繋がる物語なのです。
世界を救えた理由
本作ではラストで物語のクライマックスとして描かれる2012年の地球滅亡の危機に全てが集約されます。
本来なら絶対避けられない筈の隕石衝突というアルマゲドンクラスの危機をとんでもない方法で回避するのです。
ここではその理由についてネタバレ込みで考察していきましょう。
1975年の”フィッシュストーリー”
大元は音楽の力、正確には逆鱗というバンドが出した“フィッシュストーリー”の力でした。
日本語に訳すと「ホラ話」、真っ赤な嘘の力で世界を救ったことになります。
非常に馬鹿げていますが、発表した時彼らはホラ話が本気で世界を救うことを信じていました。
その願い自体は彼らの生きていた時代に直結はしなくても、一つの予言になっていたのです。
そしてこの1975年の出来事が以後の時代へ波及していくのです。
1982年、とある男女の出会い
二つ目が1982年の合コンで運命の女性と巡り会った雅史という男の活躍です。
彼はこの時車の中で”フィッシュストーリー”を聞き、ある男に襲われる女性を助けに入ります。
雅史は決して肉体も精神もタフではないのですが、この時既に正義の味方の役割を果たしていたのです。
その魂を目覚めさせるきっかけに“フィッシュストーリー”があり、音楽の力が波及しています。
ここには男女の恋愛を通した一つの正義の味方像が示されているのです。
2009年のシージャック
そしてもう一つ外してはならないのが2009年のシージャックです。
ここでは雅史の息子が正義の味方の教えを継いで強くなった一人のコックとして出てきます。