それでなくても敵は一度負けている清水尋也が演じた『ドSキャラ』の須藤です。
余計なことを考えていたら勝てません。
「自由になれ」は太一の千早に対する「俺たちはここにいる」という力強いメッセージだったのです。
特別な耳
太一の言葉を聞いた千早は深呼吸をしてゆっくりと髪をかき上げ耳に掛けました。
これは千早が集中した時のしぐさです。
國村隼が演じた原田先生は「千早は特別な耳を持っている」と言いました。
どんな音も聞き逃さない『特別な耳』は読み手の吐息で次の言葉を察知する程に研ぎ澄まされています。
その力を思い出させたのが太一の「自由になれ」だったのです。
眼鏡を隠したことを明かした真意
『運命戦』での勝利は『運』が味方したわけではありません。
太一は自分に『運』がないことの原因の一つは子供のころ新の眼鏡を隠したことだと考えています。
今までは新たに打ち明けられなかったその事実を新に電話で伝えました。
「卑怯もんやの」と言われましたが、それは覚悟の上です。
自分から正直に言った太一の気持ちを理解した新。
おそらく新は他の人間からこの事実を聞かされたとしても信じなかったでしょう。
二人の関係は今まで通りだったはずです。
しかし、太一はこのまま隠して『かるた』を続ける自分が許せなかったのでしょう。
そしてそんな自分は『千早を好きでいる資格』も無いとえたのです。
千早の気持ちが新にあると感じていた太一にとって必要なことは、新と同じスタートラインにつく事でした。
そして「かるたで新を超える」ことを成し遂げなくてはなりません。
しかし、そう宣戦布告した太一に帰ってきた新の答えは意外なものでした。
次回作への期待
そんな答えが新から帰ってくるとは観客ですら考えてもいなかったでしょう。
『下の句』の展開のダイジェストで走る千早。
全国大会の舞台となる『近江神宮』らしき朱色の建物が見えます。
そしてライバルらしき松岡茉優。
これでは新の真意が明らかになる『下の句』を観ないわけにはいかないと感じるエンディングです。
そこにテーマ曲、Perfumeの『FLASH』がかかりクレジットが流れ始めるという憎い演出でした。
一本の映画としては太一の告白で終われますが、そもそも2部作です。
製作側の次回作も観てもらいたいという思いが伝わります。
しかしそんな心配は不要でした。
『上の句』を観たほとんどの方が『下の句』を観ずにはいられないと思ったはずです。
『下の句』の初日舞台あいさつで異例の『続編製作決定』の発表がありました。
それを知らなかった出演者たちは舞台上で抱き合って感涙していたそうです。
みんなに愛されるこの作品ならではの素敵なハプニングでした。