名手はギターを選ばないとはよく聞く言葉ですが、リックのギターにその言葉は当てはまりません。
その良さを引き出せる実力があって初めてニューヨークの歴史の音が響くのです。
それをビルはよく理解しています。
ビルの青春とリックの青春
ビルはニックに少し照れながら言います。
新聞配達で貯めたお金でギターを買ったんだ。
引用:カーマイン・ストリート・ギター/配給会社:ビターズエンド
そのことに深く同意するニック。
そんなビルにニックも言いました。
僕は祖母に2ドルで雇われ祖父の工房の片づけをしたことがあるよ。
引用:カーマイン・ストリート・ギター/配給会社:ビターズエンド
著名な彼らもスタートは同じということです。
そこからどれくらいハマりこめたかによって人生は変わっていくのでしょう。
ネルス・クライン
ネルス・クラインはウィルコのギタリストです。
2007年のローリング・ストーン誌において新世代ギターゴッドに選ばれたほどの腕前のネルス。
彼はウィルコのジェフ・トゥイーディーにプレゼントするためにカーマイン・ストリート・ギターを訪れました。
ネルス・クラインが探しているテレキャスとは
エレキギターの大看板『フェンダー』といえばテレキャスターとストラトキャスターでしょう。
両方とも1950年代に発売されたもので、ソリッドボディが特徴です。
シングルコイルピックアップでネックもボディもデタッチャブルを採用したタイプなのでプロからアマまで幅広い人気があります。
なぜネイル・クラインはリックの店に来たのか
テレキャスタイプと決めているならリックの店でなくとも入手は可能です。
しかしネルスはリックの店を選びました。
それはリックでなくてはいけない理由があるからでしょう。
プレゼントの相手であるジェフ・トゥイーディーは父親を亡くしたばかりです。
ネルスは傷心の彼を元気づけたいと考えています。
そんなネルスにリックは一本のギターを差し出しました。
まるで『これしかないと思うよ』と言わんばかりです。
美しいプレイを見せるネイルは驚きと共に『これしかないね』という表情を返します。
リックのギターは人を癒す力さえ持つのでしょう。
そしてそのことをネルスは十分に分かっているのです。
あの懐かしいニューヨークの音を響かせることができるのはニューヨークを生きた廃材だけということでしょうか。
オリジナルのテレキャスとはタイプの違うデザインでしたが美しい木目と特徴的な節目が魅力的な1本でした。
マーク・リーボウ
マーク・リーボウはフジ・ロックフェスにも参加したことがある著名なギタープレイヤーです。
彼は笑いながら言いました。
家で弾くと近所から苦情が来るんだ。
引用:カーマイン・ストリート・ギター/配給会社:ビターズエンド
その言葉にリックは笑いながら応えます。
うちならいくら弾いてもらっても良いし歌を歌ってもいいよ。
引用:カーマイン・ストリート・ギター/配給会社:ビターズエンド
マック・リーボウの語る光と影
マック・リーボウは発表される楽曲が『光』ならギター職人をはじめとするスタッフたちは『影』だと考えているようです。
光があるところには必ず影があります。
言い換えれば影の無いところには光は生まれないのです。
この言葉はリックに対する心からの感謝の気持ちを表しているのでしょう。
そして若かったギタリストが活動の場を探していたニューヨークの全てを集約したようなリックのギターに対する敬意でもあります。
リックの愛する廃材
リックは情報が入るとどこにでも廃材を取りに行きます。
中には火事で焼けた廃材をそのまま使用することもあるのです。