赤ん坊は目に見えるものに興味を示す。
真っ白な麻衣の心には、言葉以上に目に見える愛の形が必要だった。
それが動画であり、二人を繋ぐ絆です。
麻衣が尚志をもう一度好きになった理由
麻衣が尚志をもう一度好きになったのは、尚志の一途な思いを理解したからです。
麻衣の記憶は最後まで戻りません。
以前の記憶を持つ尚志と持たない麻衣。そこには、ずれがありました。
ですが、尚志が撮り続けた動画と毎年行っていた結婚式場の予約。
その二つが麻衣の心を動かしました。
麻衣の中に記憶はなくても、今の目の前には尚志が自分を思い続けてきた証がある。
言葉だけではない説得力がここにはあります。
そんな尚志だからこそ、麻衣はもう一度好きになったのです。
そこには余計なものなど入り込む余地のない愛があります。
積み重ねられてきた日々を無駄にしないと頑張ってきた尚志の努力。
二人を支え続けてきた周囲の努力。
周りにそうさせるほど、尚志の愛は本物だったのです。
結婚式でよろける姿を見せる麻衣を支える尚志の姿は全てが報われた瞬間でした。
物語が伝える物
諦めないことの大切さ。人間には確かな愛があるといういこと。
これが今作からは伝わってきます。
時間というどうしようもない重い壁を越えた尚志と麻衣。
普通であれば諦めてしまうような状況でも尚志は諦めませんでした。
結果的に麻衣は目覚めたものの、普通に考えれば6年という歳月は絶望してもおかしくない長さです。
実際、麻衣の両親は半ば諦めかけていました。
そんな中でもただ一人諦めなかった尚志。
麻衣が目覚めてからも結婚するまで時間がかかりますが、奇跡を起こしたのも尚志が諦めず残した動画でした。
恋愛だけに関わらず、生きていると色々な試練が人生に訪れます。
だけど、そうした時に自分の心に確かな愛があるなら絶対に諦めてはいけない。
この作品は実話を元にしたこともあり、そのことが強く描かれています。
何かに落ち込んだ時、人を信じられなくなった時、この世界には信じるに足る人間の愛がある。