移民の西部開拓により、先住民はどんどん不毛の地へ追いやられ、そこで暮らすしかないように仕向けられます。
つまり移民の人々は、原住民に対して差別的な目で見ているのです。
だからこそ、歩み寄ろうとするジェーンに対してナタリーの父親はこのような言葉を投げかけます。
そう言いながら、いつも侮辱する。
引用:ウィンド・リバー/配給会社:ワインスタイン・カンパニー
このセリフから、白人による先住民に対する差別意識は明らかです。
こうなれば、当然先住民に対する犯罪被害を調査しようともしないだろうし、それが資料として挙がることもありません。
アメリカという世界をけん引する大国でありながら、この地域に関しては無法地帯だということなのです。
カナダ政府の調査内容がひどすぎる
先住民はアメリカやカナダを含む北アメリカ大陸全体にいます。
本作は、先住民に対する偏見や差別を現実問題として描きだしているため、その背景を理解することで、最後のテロップの理解ができます。
1181人の死者・行方不明者、実際は3000人?
先住民の女性が、何らかの犯罪に巻き込まれておきながら、これまでカナダ政府はその統計調査すらしていませんでした。
それに対して、アムネスティインターナショナルやカナダ市民が動いたため、カナダ政府が調査を開始しています。
調査結果によると、1980~2012年の間に、先住民女性の殺人・行方不明者数は1181人と判明しました。
しかもこの数は氷山の一角であり、本当は3000人を超えているはずだとも言われています。
確かに、本作の中でもナタリーの事件をジェーンが担当しなければ、闇に葬られた事件のはずです。
さらには、コリーの娘であるエミリーは、ナタリーと同様の亡くなり方をしており、記録されていません。
テロップの内容が問題とされたからこそ、このような調査がされ、それでもなお把握できていない数が半数以上あるのが現実です。
ネイティブアメリカンの女性は7倍の被害率
ではなぜ先住民女性が、ここまで死者・行方不明者が多いのかというと、それだけ犯罪被害数が多いからです。
カナダで先住民の多いのサスカチェワン州では、先住民女性の犯罪被害率が、そうでない女性に比べて7倍も高いという結果が出ています。
この土地は凍った地獄だ。何もすることはないし、女とも楽しみとも無縁だ
引用:ウィンド・リバー/配給会社:ワインスタイン・カンパニー
これはピートがコリーに対して言った一言。白人に不毛の地へ追いやられた先住民の地に、住みやすさなどあるわけありません。
当然仕事も満足にあるわけでもないため、結果的に犯罪も増加します。
その犯罪に、男性に比べると力の弱い女性が巻き込まれるというわけです。
つまり最後に現れたテロップの背景には、アメリカやカナダの白人による植民地経営の負の遺産があるのでした。
ナタリー事件の犯人の正体
リトルフェザー兄弟、チップ・ハンソン、フランク・ウォーカー、マット・レイバーンと、ナタリー事件に関わる男性が本作で多く出ます。
そのため、結局ナタリー事件の犯人は誰だったのか、と混乱してしまった人もいるはずです。
マットが疑ったのは「ピート」
ナタリーの恋人のマットが関わっていそうだとして、マットが以前いた作業場に捜査官たちが集まります。
結局そこで大きな銃撃戦となり、ピート一人が逃げ出しました。
そのピートが何か知っている、または犯人だと思うコリーは、ピートを痛み付け、山頂まで連れて行き、こう聞きました。
正直に答えろ。酔ってた?孤独だった?それで?やったなら男らしく言え。「レイプした」と
引用:ウィンド・リバー/配給会社:ワインスタイン・カンパニー
つまりコリーは、ピートが犯人だと疑っているし、半分確信しているのです。
コリーの娘であるエミリーも、ナタリーと似たような亡くなり方をしています。おそらく、直感めいたものが働いたのです。
このことから、ピートが犯人であることが予見できますが、ピート本人からは何と答えたのかというと…。
俺がやった
ナタリー事件の犯人が誰であるかは分かりにくいのですが、きちんとピート自身が罪を認めています。
先ほど紹介した場面で、コリーに迫られたピートは自分がやったことを認めました。
やはりピートがナタリー事件の犯人なのです。そしてさらに、コリーにこのように聞かれます。
恋人は?邪魔されたから殴り殺したのか?
引用:ウィンド・リバー/配給会社:ワインスタイン・カンパニー
ここで言う恋人とは、ナタリーの彼氏であるマットのことを指していると思われます。