引用元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07KYX3BHS/?tag=cinema-notes-22
『ボーダーライン』『最後の追跡』で脚本を務めたテイラー・シェリダンが監督を務める『ウィンド・リバー(原題:WIND RIVER)』。
主演は『アベンジャーズ』でおなじみのジェレミー・レナーが、ネイティブアメリカンが居住する地域のハンターとして活躍します。
2018年に日本で放映されたクライムサスペンスの本作は、アメリカのネイティブアメリカンが居住する地域の闇を映し出していました。
映画ストーリーは、ナタリーの事件に関わる人物として、さまざまな人物が疑われていたので、犯人像が見えない部分もありました。
また、コリーがピートを山頂付近まで連れてきておきながら、なぜコリーに手を下さず、最期までピートを見送るのか。
どちらも非常に気になる点ですが、最も気になったのは映画ラストのテロップ。観ていて、ギョッとするような内容です。
今回はこれらの3点について、考察していきます。
現場対応によって事件が闇に葬られる
映画ラストのテロップは、このような内容でした。
ネイティブアメリカン女性の失踪者に関する統計調査は存在しない。失踪者の数は不明のまま
引用:ウィンド・リバー/配給会社:ワインスタイン・カンパニー
本作はネイティブアメリカンの実情を映し出した映画であり、テロップの内容は事実です。
ネイティブアメリカンは、アメリカ白人社会に対して不信感を募らせています。
映画内でもFBI捜査官エリザベス・オルセン演じるジェーンにも、その感情は向けられていました。
警官は6人しか配置されていない
ナタリーの遺体を監察医が死因を特定したとき、死因を肺出血とし、強姦や暴行についてはあまり報告したがりませんでした。
なぜならネイティブアメリカンが住むこの地域に、警官は6人しか配置されておらず、ベンが大変になってしまうからです。
このような犯罪が起こり、広大な地域であるにもかかわらず6人しか警官が配置していないため、捜査が十分に行えません。
その状況を作り出しているのは、アメリカ政府だったり、州だったりするわけです。
先住民の人々も、そのようなアメリカの政府や州に対する対応に不信感を募らせるのは当然でしょう。
FBIが熱心なのも珍しい
基本的にアメリカの場合は、その地域ごとを管轄する警察組織が、すべてを担います。
ただし州をまたぐ事件の場合は、FBIが出動しますが、ワイオミング州ウインド・リバー・インディアン居留地の事件にFBIも非協力的。
FBIの割に熱心なのはうれしいが、ランディ(監察医)は味方だぞ
引用:ウィンド・リバー/配給会社:ワインスタイン・カンパニー
ベンがジェーンに語ったこの一言は、裏を返せばFBIはこれまで熱心には事件を操作しなかったことの証拠です。
ネイティブアメリカンが住む地域の人々は、根っから警察組織そのものを信用していないのもうなずけます。
自分たちの地域のことは自分たちで
大きな警察組織を頼らないのであれば、犯罪行為に対してどのように対処するのでしょうか。
このネイティブアメリカンたちの地域では、犯罪に対して「自分たちで」対応しようとしています。
とくにそれが色濃く出たのが、ピートを山まで連れて行ったコリーの姿にありました。
結局FBIのような大組織や法律に頼るのではなく、住んでいる地域の人々の感覚ややり方によってピートをさばいたのがあのシーンに現れます。
つまり、自分たちの地域のことは、自分たちでどうにかするのです。
裏を返せば、警察の大組織や法律に見放された地であるからこそ、そのような対応を行ってきました。
そうなれば当然、失踪者数や犯罪数にを警察が把握し公表することはありません。
結果的に最後のテロップのような統計資料も存在しないのです。
ネイティブアメリカンへの差別
そもそもアメリカという国の先住民はネイティブアメリカンと呼ばれる人たちです。
しかしイヌイット族などを含む多くの人々が、アメリカの先住民でありながら、白人系移民が植民地化しました。