出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07Y98NY6H/?tag=cinema-notes-22
映画「COLD WAR あの歌、2つの心」は「イーダ」で有名なパヴェウ・パヴリコフスキ監督作品です。
主演はヨアンナ・クーリクとトマシュ・コットで成立させ、冷戦下のフランスとポーランドを舞台にしています。
カンヌ国際映画祭やアカデミー賞など数々の映画祭で高く評価され、以下の賞を受賞しました。
ベルギー映画批評家協会グランプリ
第71回カンヌ国際映画祭監督賞
第43回グディニャ映画祭金獅子賞
第31回ヨーロッパ映画賞作品賞・監督賞・脚本賞・女優賞・男優賞・編集賞
フロリダ映画批評家協会賞撮影賞
ガウディ賞ヨーロッパ作品賞
ゴヤ賞ヨーロッパ映画賞
ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞外国語映画賞
ニューヨーク映画批評家協会賞外国語映画賞
ニューヨーク映画批評家オンライン賞外国語映画賞引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/COLD_WAR_あの歌、2つの心
昔懐かしいモノクロ映像で魅せる映像美と音楽も素晴らしく、しかしながらその恋は凄く屈折しています。
本稿ではヴィクトルがポーランドに帰国した理由をネタバレ込みでじっくり掘り下げていきましょう。
また、ズーラとヴィクトル、二人の男女は最後どのような運命を辿っていくのかも併せて見ていきます。
歪んだ男女の物語
本作の特徴は誤解を恐れずいえば“歪んだ男女”の物語であるということです。
ヴィクトルはピアニストとして高い才能と音楽への拘りを持ちながらズーラに翻弄されてしまいます。
一方のズーラも歌手・ダンサーとして高い才能を持ちながらヴィクトルの為なら卑劣な手段すら厭いません。
しかし本人達はそれが決しておかしいものだと疑うことなく正しいと信じているのです。
本作はそんな二人の狂気じみた愛がどういう結末を迎えるかを88分という短い尺に詰め込みました。
その歪みぶりを本題に沿う形で考察していきましょう。
ヴィクトルがポーランドに帰国した理由
ヴィクトルはかつて自身が求める音楽と国が求めるジャズとの相違から西側へ亡命します。
しかし、そんな彼は物語中盤で何を思ったかポーランドへ一時帰国してしまったのです。
果たして彼は何故一度捨てた筈の祖国へ戻ってきたのでしょうか?
ズーラを失った絶望
ヴィクトルが戻ってきた一番の理由はあくまでも恋人ズーラを失ったことへの絶望でした。
彼が求める音楽えを形にしたレコードが売れたもののズーラが気に入らず喧嘩別れしてしまったのです。
これだけ見ると仕事は出来るが好きな女がいなければ何も手に着かない情けない男ではないでしょうか。
つまり彼は好きな女性の尻を追いかけて戻ってきたことになり、まるで国外逃亡の重みがありません。
しかしこのよくも悪くも簡単に女に流されてしまいやすい所がヴィクトルの所以であるといえます。
音楽へのこだわりは建前
ヴィクトルが国外逃亡した動機として政治のプロパガンダへ利用され歪んでいく音楽への苛立ちがありました。
しかし、これはどちらかといえば建前で本当の所はズーラと一緒にポーランドの音楽を追究したかったのです。
動機の主従が逆転しており、主は”ズーラと一緒にいること”であり従が”音楽へのこだわり”でした。
この動機が本末転倒な所がヴィクトルが音楽家として歪んでいると推測される部分です。
体の距離は心の距離
しかし、だからといってヴィクトルがずっとズーラ一筋だったかというとそういうわけでもありません。
やはり人間新しい刺激へ目移りする生き物で、体の距離はそのまま心の距離となりパリで愛人を作ります。
それもその筈、厳しい戦時中一度亡命すれば次会える保証はないし、二人は婚約も結婚もしていません。
そうなれば自ずと恋人・愛人を作るわけであり、ズーラとはそのことで喧嘩になりました。