そしてもう一つ、物語の中ではガンタウとリウの乗るトラックに整備士が乗る場面があります。

この男は劇中整備士以外正体も何もかもが謎であり、その行動原理も謎に包まれているのです。

果たして何の目的で整備士は行動しているのでしょうか?

車の修理か?

彼がトラックに乗った目的は車の修理にあるといい、崖に落ちかけたトラックを助けました。

しかもトラックに載せているのはただの豚ではなくきっちりと選別された豚なのです。

そのような車とあっては尚更修理出来る人は限られてくるのではないでしょうか。

となると、整備士はトラックについてかなり知り尽くしていることになります。

ですが、本当に車の修理が目的だったのでしょうか?

日本軍の回し者による爆弾テロ

原子爆弾テロ概言―憂悶の反核文学者宣言から七〇年

実際は車の修理というのは口実で日本軍の回し者による爆弾テロでした。

ガンタウはそのことに直感で気付き、一度はトラックから追放しています。

二度目はトラックに爆弾を仕掛けられましたが、メイのお陰で何とか阻止できたのです。

ここから見ても真の狙いは豚共々主人公の属する部隊を倒そうとしていたのでしょう。

空中戦で対応出来ないなら近寄って殺せば良いというのはかなり賢い方法です。

暗号解読機入手の意味

暗号に敗れた日本

ラストでは日本の暗号解読機が無事に中国軍に渡りました。

これが何を意味するのかというと恐らくは米軍と結託しての戦争勝利ではないでしょうか。

最初は上海を占領され悲惨な状況だったところから逆転に成功したのです。

つまり本作では第二次世界大戦中の中国と米国が日本軍に勝てるようになるまでを描いたのです。

どこまでも日本を憎みながら、倒すことだけを目的化していたことが窺えます。

戦争は善悪ではなく正義の戦い

戦争と正義―エノラ・ゲイ展論争から (朝日選書)

こうして見ていくと、戦争とは結局善悪ではなく各国の正義にしか根拠がないと分かります。

日本軍と中国軍&米国軍、どちらも自分達が正しいと思っているから戦争は起こるしなくならないのです。

第二次世界大戦、わけても日中戦争は互いの正義が暴走を重ねた結果苛烈な大量殺人の戦争となりました。

そうした血塗れの歴史の上に今私たちが生きていることをこの映画は突きつけています。

重慶や長慶を舞台として滅多に描かれることのない世界大戦の勝利者と呼ばれる国の感情。

そこを切り取って大々的に見せてくれた作品として、一つ考えさせられる話だったのではないでしょうか。

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