頭に穴を開けられること以上に知らない間にこのような施術をされたことにエリカも主人公達も恐怖します。

そしてそれを簡単にやってしまえる本作の犯人達の遂行力もその怖さを加速させているのです。

ここから想像するに犯人達の中には医療術に長けた者が居るということではないでしょうか。

ただの愉快犯ではない、非常にレベルの高い犯罪組織の姿がエリカを通して示されています。

その恐怖の象徴としてゲーム感覚で人の頭に穴を開けるなんてことが平気で出来てしまうのです。

犯人に狙われた理由

エリカの正体がバレたことで最終的に主人公達が犯罪組織カロンに狙われていることに気付きます。

果たしてマタイアス達4人の男女は何故犯人達に狙われたのでしょうか?

壮大なネット殺人ゲーム

密室殺人ゲーム2.0 (講談社文庫)

本作における犯罪は壮大なネット殺人ゲームとして描かれ、マタイアス達はそれに巻き込まれた構図です。

まずマタイアスがPCを盗む所からして最初からカロンが意図して盗ませる計画を立てていました。

こうすることで自分達が裏でやっている闇ネット犯罪を上手くゲームに仕立てたかったのでしょう。

闇サイトでの犯罪ということにすれば殺人であったとしても上手くカモフラージュ出来ます。

真の悪党とは決して表舞台に立たず、裏で全く姿を現すことなく暗躍するものなのです。

ハッキングを利用しての濡れ衣

濡れ衣-結城半蔵事件始末(4) (双葉文庫)

二つ目に主人公達のデータをハッキングすることで濡れ衣を着せることが出来るからです。

象徴的なのはAJが警察に犯人だと疑われて射殺されるシーンで、正にハッキングを利用しての冤罪でした。

またノラがデイモンを絞殺した上で自殺に見せかけ、更にデイモンのPCに全員殺したかのような遺書を残すのです。

このようにあることないことを既成事実にして濡れ衣とすることで裏工作が完成してしまいます。

こうすることで主人公達は勿論他の閲覧者の目まで誤魔化してしまう狡賢さが際立つのです。

ネット住民の民意の怖さ

週刊東洋経済 2017年12/23号 [雑誌]

そして最後にマタイアスはダークウェブで行われたマタイアスを生かすべきかという投票で殺されました。

怖いのはこうして裏工作の結果罪のないマタイアスまでもがネット住民の民意で殺されたことです。

死ぬ間際で漸く犯人達の狙いに気付いたマタイアスですが、その時にはもう彼の居場所はありません。

今ではこうして簡単にネットで個人情報が明かされ、個人の生死が決められてしまうのです。

犯人達の狙いは最初から自殺と見せかけてマタイアス達を殺し、罪を擦り付けることにありました。

こうやってネット犯罪は出来上がっていくのだということをよく示したシーンではないでしょうか。

ビットコインが入金された意味

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そしてもう一つ、エリカの項目でも触れたビットコイン1000万入金の連絡をするシーンがあります。

果たしてこの大量のビットコインが入金されたことには何の意味があったのでしょうか?

マタイアスを深みにはまらせる

最初の目的はマタイアスを深みにはまらせることだったのではないでしょうか。

マタイアスは初期化すらされていない前の人のデータが残ったPCを勝手に使う人なのです。

一言でいえばまるで危機感のない人といえ、そのくせ好奇心だけは妙に強いのだから始末に負えません。

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